今年1年を振り返った日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)。協会発足から長年にわたって会長職を務めた松本南海雄名誉会長が、ドラッグストア業界として初めて旭日小綬章を授賞するという喜ばしい出来事はあったが、一方で、不適切な薬歴記載問題への対応として「薬歴管理ガイドライン」の作成に迫られたり、食品の機能性表示制度への対応、介護食品の基準づくりへの協力、そして軽減税率導入に対する活動など、今年も様々な課題への取り組みに奔走することとなった。
ドラッグストアは業態として日本産業分類に明記され、今やほとんどの生活者がその存在を認知(認識)しているといえる。「国民の健康寿命の延伸」が国策に示されたこともあり、セルフメディケーションを主体とした日常健康管理、疾病予防、そして治療と、今後ドラッグストアが果たす役割の重要性が指摘されている。それと共に聞かれるのが、目覚ましい成長を経て現在は“踊り場”にあるということだ。
高齢社会に向けて有意義な業態には違いないが、ネット販売を含めて医薬品を取り扱う業種が増加し、またドラッグストア自体も生鮮・加工食品、酒類、菓子類、弁当など取り扱い品目を拡大したことで、他業態と競合する部分が急増している。医薬品の高い粗利率で、利益率の低いカテゴリーをカバーしている部分もある。
JACDSでは昨年来、経済産業省の「セルフメディケーション推進におけるドラッグストアのあり方研究会」とも連携しながら、今後ドラッグストアに求められる機能やサービス、制度的位置づけの明確化や法整備などの研究・検討を行ってきた。各重点施策プロジェクトは現在も着々と継続しており、JACDSでは来年を「再成長元年」と位置づけ、業界成長に向けた活動を強力に推進していきたい考えだ。その具体化に関して「来年から“仕掛けていく”という感じ」(宗像守事務総長)と表現する。
今年JACDSが新たに打ち出した方向性に「健康ハブステーション」がある。医療から健康維持・増進、介護、食品や日用品の供給まで生活者の様々なニーズを地域で身近な存在として確固たる役割を担う。加えて、医療機関や介護施設と連携したコーディネータ的役割を担い、セルフメディケーションや未病・予防分野での存在を発揮していくというもの。この部分は現在進められている「健康サポート薬局」と重複する部分も多く、その実現が強く望まれる。
「セルフメディケーション推進は、一般生活者がその意味や目的を理解していないと目立った成果につながりにくい」と指摘する薬業界関係者の声もある。地域住民がどれだけセルフメディケーションの重要性を真に理解するかがドラッグストアの再成長の鍵といえるだろう。