4月の診療報酬改定では医師、歯科医師、薬剤師ともに「かかりつけ」機能が評価されることとなった。現在、超高齢社会を迎える中で、2025年をメドに、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるよう地域包括ケアシステム推進に向け取り組んでいく。そうした中で、地域の医療機関や薬局が、患者の健康状態を日常的に把握するため、政策誘導として「かかりつけ」の評価が行われる格好となったわけだ。
今月10日には、16年度診療報酬改定の点数が明確になった。薬剤師関連では、かかりつけ薬局機能が手厚く評価される一方で、特定の医療機関からの処方箋が集中する「門前薬局」では、調剤基本料の引き下げが行われる。これらは、医薬分業の黎明期から歪な形で、存続してきたマンツーマン分業を主体とした薬局チェーン等の経営スタイルの変更を余儀なくされる方向性が示された。
その一方で、医薬分業の進展と共に薬局薬剤師は、保険薬局の基本機能としての処方箋調剤、その周辺業務に特化して取り組んできたのも事実。その過程で、一般薬から生活雑貨まで販売し、健康相談にも気軽に応じていた「街の薬局」のスタイルから、処方箋がないと敷居が高くて入れない場所に変貌してきたのも現実問題である。
今回の診療報酬改定で大きくクローズアップされる「かかりつけ機能」。地域医療の中での薬局薬剤師の役割として、個別の患者の健康状態までも把握し、必要な対応を行うという業務にまで範囲の拡大が求められる。
そこには薬局に訪れる患者の認識と理解も必要になる。その構築には時間をかける必要があるのは言うまでもない。性急に「算定要件をクリアし、点数を取りにいく」という姿勢だけでは、信頼を勝ち得ることにはつながらず、ともすれば従来以上の薬局バッシングを受けかねない。
今回の診療報酬上のかかりつけに対する点数措置、健康サポート薬局の制度は、ともに要件として、薬剤師の薬局での勤務体系にまで踏み込んでいるのが大きな特徴だ。
これまでは、薬局という箱の中に薬剤師免許の有資格者がいれば、問題なく業務が遂行できたともいえる。その意味では、本来あるべき、「かかりつけ」薬剤師、薬局が正当に評価される時代が来たことを歓迎したい。
薬剤師・薬局のかかりつけ機能を点数として評価する一方で、厚生労働省は12日に、16年度からスタートする「健康サポート薬局」の基準や、常駐薬剤師が受講する研修実施要綱などを公表した。
かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に加え、国民による主体的な健康の保持増進を積極的に支援する機能を備えた薬局が届け出を行い、各都道府県がそれを公表する制度だ。
4月から常駐薬剤師の要件としての研修が実施され、10月頃から届け出が始まる見通しのようだ。これは、国民・患者が、かかりつけ薬剤師・薬局を選定するための一つの指標にもなり得る。その動向に注目していきたい。