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治験の意義、原点回帰が必要

2016年3月4日 (金)

 SMOによる治験データ改ざんがまた発覚した。大手SMOのイーピーミントが医薬品卸サンキの子会社だったサンキ・クリニカルリンクから引き継ぎ実施した治験で、CRCが血圧測定時刻を改ざんしていた。治験実施計画書に規定された手順を守らず、血圧測定後に採血しなければならないところを採血後に血圧を測定してしまい、その逸脱を覆い隠すため、事実でない血圧測定時刻をワークシートに記載する不正を行ったというものである。驚くことに、血圧測定時刻の改ざんは2013年12月の治験開始後から行われており、ようやく昨年12月にサブ担当についた他のCRCが不正を発見するまで、2年以上も事件が明るみに出なかった。

 こうなると、相次いで発覚する治験データの改ざんは、氷山の一角と考えざるを得ない。問題の深刻さは、プロトコールに則った手順を守らず、測定時刻を書き換えてしまうという基本的なルールすら守られていないことにある。さらに言えば、SMOの不正ばかりがクローズアップされているが、本質的には治験依頼者である製薬企業の責任が大きい。

 治験の根幹に関わるようなデータ改ざんといった不正行為が相次いでいる事態は、通常考えられないことだ。それでも複数の関係者からは、最近の新薬開発の現場は治験を依頼する製薬企業側、実施する医療機関側、共に業務が形骸化しているとの声も聞こえてくる。「ディオバン」事件などの臨床研究をめぐる不正が表面化した一方、GCPで規制されている治験に関しては、日本では十分な体制で実施できるようになったという慢心が、今日の不正ドミノにつながったのではないか。表向きは患者さんのためにと言いながら、実際には治験に参加してくれた被験者のボランティア精神を踏みにじっているとしたら許されない。

 そもそも新薬を開発するという意味を、もう一度考え直す必要がある。厚生労働省によると、「治験」とは「薬の候補を用いて国の承認を得るための成績を集める臨床試験」で、「治験は科学的な方法で、参加される方の人権を最優先にして行われる」ものとしている。そして、GCPで定められているルールに、「製薬企業は治験が適正に行われていることを確認すること」があると国民に説明している。

 昨今の状況を見ると、本当に参加する被験者の人権を最優先としているのか、製薬企業は治験の適正な実施をきちんと確認しているのか大いに疑問符が付く。

 治験業務を支援するSMOの果たしてきた役割の大きさを否定する人はいないだろうが、基本的なルールが守られない深刻な事態を改善するには、被験者あっての治験という原点に帰るしかない。関係者の間に、今を乗り切ればいいという考えがあるならば、社会から手痛いしっぺ返しにあうことを肝に銘じたい。




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