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製薬産業、好業績も大きな課題が

2007年12月5日 (水)

 主要製薬企業の2008年3月期中間決算が出揃った。日本製薬工業協会が東証1部に上場する28社(12月決算1社、2月決算1社を含む)を集計した結果をみると、28社全体で売上高は増収、また営業、経常、中間純利益のいずれもが増益となるなど、全般的には好調な業績だったといえるだろう。

 28社トータルの売上高は前年同期に比べ5・7%伸びており、増収が21社だったのに対し減収は7社であった。さらに、海外売上高比率が前年同期に比べ、2・7ポイント増の35%にまで拡大するなど、海外事業へのシフトが一層目立っている。

 利益面では営業、経常利益とも増益だったのは22社、減益だったのはわずか6社である。純利益ベースでも増益が20社だったのに対し、減益は8社にとどまった。

 このように全般的に好業績を収めた理由として考えられるのは、薬価改定がなかったこと、さらに海外での売り上げが引き続き好調に推移したことが挙げられる。利益面では、医療用医薬品事業へのさらなる集中、自社品売上高の伸長による原価率の改善、特殊要因による研究開発費の減少やその他販管費の抑制などが主な要因と考えられている。

 とりわけ注目したいのは、グローバルに事業展開している上位4社の業績だ。業界トップの武田薬品は、糖尿病治療薬「アクトス」、アステラス製薬は免疫抑制剤「プログラフ」、第一三共は高血圧治療薬「オルメテック」、エーザイは抗アルツハイマー型認知症薬「アリセプト」といったグローバル製品がいずれも好調に推移し、業績向上にも大きく貢献した。

 特に、エーザイは海外の売り上げ比率が6割を超えているほか、武田薬品やアステラス製薬も5割台に達するなど、海外事業が業績に直結する度合いが一段と濃くなった。もはや日本の上位4社は、国内で利益を得るのではなく、欧米市場で獲得する企業へと体質を転換しつつある。

 また、上位4社のうち唯一、売上高が前年同期に比べ減収となった第一三共も、欧米子会社の決算期変更という特殊要因が減収の理由であり、この影響を除けば実質的には増収増益の決算となる。メバロチンの特許切れによる影響を補う形で、オルメテックのグローバル展開が進み、その結果、米国を中心とした海外事業が業績に貢献し始めた。

 このように、海外展開の貢献度が高い企業ほど好業績を残す傾向が、今回の決算からも見てとれるわけだが、課題も残されている。というのも武田薬品などいくつかの企業では、中間決算発表前後に大きく株価を下げた。

 例えば、武田薬品は中間決算の発表前に、将来の主力品と見込まれていた高脂血症治療薬「TAK‐475」について、FDAから追加試験の実施を求められ承認申請を延期すると発表。エーザイも中間決算発表時に、開発を進めている抗パーキンソン病薬の承認申請が遅れることを明らかにした。武田、エーザイとも業績が絶好調であるにもかかわらず、株価は大きく下がった。いずれも新薬開発の遅れに、市場が敏感に反応したためだ。

 研究開発志向型の製薬企業は、新薬の研究開発に投資し、その特許が切れないうちに承認を得て販売し、投資を回収しなければならない。現在、各社の主力製品は、10年以降に相次いで特許が切れることから、現在開発中の新薬が、次代の業績を支える柱となる。特許切れの時期を睨みながら次の新薬を上市しなければ、特許切れ後に業績は下降線を辿ることになってしまう。

 新薬開発の動向に市場が敏感に反応するのは、こうした背景によるものだが、それだけに“想定外の事態”にも対応できるように、パイプラインの充実を図っておくことが、今の製薬企業にとって大きな課題といえる。

 通期見通しでも、増収増益を見込む企業が大半を占めるが、医薬品産業をめぐる環境は依然として厳しいものがある。好業績とは言っても楽観できる状況にはなく、まだまだ多くの課題を抱えているのが、現在の医薬品産業の姿といえよう。




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