薬局を地域に密着した健康情報の拠点として、セルフメディケーション推進に向け薬局・薬剤師の活用を促進する取り組みが、国の施策として進められている。昨年10月には厚生労働省が医薬分業の原点に立ち返り、現状の薬局を患者本位のかかりつけ薬局に再編するため、「患者のための薬局ビジョン」を策定。そして今年度からの「健康サポート薬局」の施行も含め、言うなれば“患者や住民から真に評価される薬局・薬剤師”の道筋が示されたわけだ。
最近の医薬関連の学会、薬剤師関連の学術集会などではもちろんこうした流れに同調したわけではないが、例えば薬局(薬剤師)と医師・看護師、さらに介護スタッフや福祉関係者など他職種と連携して地域医療の充実、患者・住民のQOL向上を図る活動の発表が目につく。職種間の障壁を越え、他職種を理解し、また理解される取り組みは間違いなく広がっていることがうかがえる。
先週末に都内で開かれた薬局関係者向けのフォーラムでも、地域住民に向けた健康イベントの報告、薬局での薬剤師と管理栄養士が連携しての健康栄養相談会の報告など、様々な活動が発表された。この中で、調剤併設型ドラッグストアが行った患者アンケート(今年5月に実施。137人が回答)の一部を少し紹介したい。
「かかりつけ薬剤師」については、95%が決めておらず、今年度の調剤報酬改定でその役割が明確化されたことも約8割は知らなかった。現在、かかりつけ薬剤師がいない人に今後作りたいかを聞くと、「作りたい」は約2割で、6割強は「分からない」と回答した。
かかりつけ薬剤師を作るかどうかの設問で「分からない」を選択した人の理由で多かったのが、「必要性が分からない」「利点は分かるが有料だから」「制度自体がよく分からない」「病院近くの薬局の方が都合がいい」などで、中には「皆さん説明が丁寧だから(店舗を)限定したくない」との声もあるものの、メリットをあまり感じないという理由も少なくない。
こうした意識調査では、「セルフメディケーション」に関する認知度についても、同じような傾向がある。語句や表現から意味するところは何となく認識できるものの、その制度の本質や目的を実際に分かっていない人が多い。今回の「かかりつけ薬剤師」制度に関しても、調剤業務を含め患者がどれだけ薬局・薬剤師という存在、社会的に重要な役割を担っているということを、一方通行的な情報発信でなく、しっかりと理解してもらうことが前提となる。
加えて、薬剤師が地域医療チームの一員として患者の安全確保と医療の質向上に寄与していること、そして地域住民の健康をサポートしている“姿”をこれからも積極的にアピールし続けていくことも大事な使命といえよう。