日本薬剤師会が6月に開いた定時総会で、山本体制2期目の新執行部が発足した。
山本会長は総会後の会見で、2年後に控える診療報酬・介護報酬の同時改定について、「(財源が)ない中でしっかりと確保することが大きな課題」と語った。
消費税率の引き上げ延期によって、財源不足が既定路線となっているだけに、同時改定をどう乗り切るかは、新執行部にとって最大の懸案事項となるだろう。
一方で、ここ数回の総会では、「後発医薬品調剤体制加算のハードルが高い」、健康サポート薬局の基準の一つになっている「OTC薬の品揃えのハードルが高く、日薬として支援する考えはないのか」など、今ひとつ、分業バッシングに対する危機感が伝わっていないのではと感じざるを得ないような内容の意見や要望が会員から出ている。
対する執行部も、そうした会員を諭すような答弁も行っていない。執行部の体制が盤石になるに従って、質疑応答の熱が奪われているようであれば、残念だ。
特に分業バッシングが厳しかった昨年、厚生労働省が健康サポート薬局のあり方をまとめ、「患者のための薬局ビジョン」を策定した。薬局ビジョンを踏まえ、2016年度診療報酬改定で「かかりつけ薬剤師指導料」も新設された。
仮に、これで分業バッシングがなくなるかもしれないと考えていたら大きな間違いだ。厚労省の田宮室長が健康サポート薬局の説明会で「期待に応えるラストチャンス」と発言したことからも分かるように、厚労省が矢継ぎ早に打ち出した一連の施策の裏には、「これを失敗したら後がないぞ」というメッセージが隠れていると理解すべきだ。
分業バッシングは、依然としてくすぶり続けており、再び火の手が上がった途端、本当に「薬剤師はいらない」という状況に陥る危険性があるということだ。
今月13日の日薬・都道府県会長協議会では、将来的に健康サポート薬局が診療報酬上の点数措置につながるのではとの思惑から、一部の都道府県薬が実施した研修会に参加希望者が殺到したことを踏まえ、有澤賢二常務理事が「本当にやれる薬局だけに手を挙げてもらいたい」と、異例の要請を行った。
中途半端に取り組み、国民から批判を受けるようなことになったら、取り返しのつかないことになるという幹部の判断だったのだろうが、こうしたメッセージの発信は、これからも必要となろう。
厚労省保険局医療課で16年度診療報酬改定を担当した中井清人・前薬剤管理官は「3割の薬局の評価が変われば、薬局全体に対する評価も変わっていく」と言っていた。
新執行部には、同時改定への対応と同様に、これらの施策にしっかりと取り組ませ、会員の底上げを図るという重要な役割を期待したい。