先月公表された厚生労働科学研究班「薬局・薬剤師の業務実態の把握とそのあり方に関する調査研究」の研究報告書が薬局薬剤師の注目を集めている。
研究班が2015年度に実施した薬局のタイムスタディ調査によって、院外処方箋1枚の調剤に要する薬局薬剤師の業務時間は平均12分前後に達することが示された。1枚の調剤に必要な時間が明らかになることは将来、薬局薬剤師の人員配置基準や調剤報酬に影響を及ぼしかねない。
タイムスタディ調査は、偏りが生じないよう調査対象薬局を選定し全国の10薬局を対象に実施された。複数の調査員が薬剤師の横に張り付き、ストップウォッチを使って計測した厳密なものだ。受付から薬歴確認、疑義照会、計数調剤や計量調剤、監査、薬剤交付、服薬指導など一連の業務に薬剤師が費やした時間を計測。短い薬局では平均9分50秒、長い薬局では平均14分34秒などバラツキがあったが、概ね12分前後を要するという結果だった。
薬局薬剤師の配置基準は「薬局並びに店舗販売業および配置販売業の業務を行う体制を定める省令」に定められている。その規制に沿って薬局は基本的に、1日平均40枚の院外処方箋に対して1人以上の薬剤師を配置する必要がある。
12分に40を乗すると480分。ちょうど8時間だ。今回の調査では規制と現状が概ね合致していることが示されたため、この結果をもって薬局薬剤師の人員配置基準に大きな影響があるとは考えにくい。目を向けるべきは今後の展開だ。
公的な厚生労働科学研究で薬局薬剤師のタイムスタディ調査が実施されたことに大きな意味がある。しかも研究班は「今後の薬局・薬剤師の適正業務を把握するためには、対人業務や残薬対応等での業務量の増加の割合と、これまでの調剤業務で減少できる業務について明確に把握できるよう、継続的なタイムスタディ調査等の実施が必要」としている。
PTPシートの数をかぞえたり、散剤や水剤を調製したりするなど手を動かす業務は、中長期的にロボットなどに代替されていくだろう。一方、処方鑑査や疑義照会、服薬説明など頭を使ったり対話したりする業務の充実が求められている。業務の変化によって今後1枚の調剤に必要な時間は短くなるのか、長くなるのか。その変化をタイムスタディ調査で追跡する必要性を説いている。
その調査結果は将来的に、薬局薬剤師の人員配置基準や調剤報酬のあり方を議論する材料として活用されるかもしれない。業務のロボット化だけが進むのなら全体の時間は短くなる。逆に、頭を使う業務が増えれば全体の時間は長くなる。タイムスタディ調査が毒になるのか、薬になるのか。その命運は薬局薬剤師自らが握っているといえるのかもしれない。