先の参議院議員選挙で、薬剤師・薬業界の統一候補として自民党から比例区で出馬した藤井基之氏は、党内比例13位の14万2132票を獲得して当選した。藤井氏の当選は、薬剤師職能拡大に不可欠で、関係者は一様に安堵の表情を浮かべた。
とはいえ、藤井氏の得票数は、当初目標に掲げていた20万票を大きく下回る結果となり、前回(2010年)より3640票も減少した。その要因を改めて検証し、次回の参議院選挙に生かす必要がある。
藤井氏の都道府県別得票数を見ると、前回より票数を伸ばしたのは14都道府県のみだ。果たして、票数を伸ばした都府県ではどのような傾向が見られたか。
まず、2587票伸ばした東京都は、石垣栄一都薬剤師連盟会長のもと、一丸となって支援活動を繰り広げた。
病院薬剤師会と統合した京都府薬剤師会や兵庫県薬剤師会の伸長も目立つ。「各県病薬のトップは、国公立病院の人が占めているため、選挙では動きにくい」との指摘がある。だが、京都府や兵庫県の実績を見ると、統合まで至らなくても選挙時の都道府県薬と病薬の連携は必要不可欠になるといえるだろう。
沖縄県の健闘も見逃せない。基地問題で自民党に強烈な逆風の中、前回よりも277票伸ばした。今年6月の総会で新会長に就任した病薬出身の亀谷浩昌氏が、開局と病薬のパイプ役となり、関係団体を徹底的に回ったことがその主要因に挙げられる。
その一方で、票数を伸ばした県だけが頑張ったと言うのは極論である。尽力したものの、その地域特有のやむを得ない事情で票数を減らしたケースもあるからだ。
大阪府薬剤師会では、04年から独自の取り組みとして「未来を担う若手薬剤師フォーラム」を開催し、次期指導者の育成と若手薬剤師に政治の重要性の訴求に取り組んできた。
今回の藤井選挙でも、懸命な選挙活動を繰り広げたものの、残念ながら前回より2585票も下回る結果となった。その理由は、大阪特有のおおさか維新の会旋風が吹き荒れたためだ。
では、今後、どのような選挙対策を進めていけばよいのか。「3年後の参議院選挙にも統一候補を立てる」という日薬連盟会員の声も聞こえてくる。だが、もしそうなれば、今回の藤井選挙において、3年後に改選を控える衛藤晟一氏を支援する福祉系の人々の後押しが大きかったことが懸念される。
いずれにしろ、医薬分業や薬学教育6年生の実現、調剤報酬算定など全て政治で決着してきたのは言うまでもない。基本は、会員一人ひとりに薬剤師議員の必要性を根気よく説いていくしかないだろう。
また、今回の選挙で、理学療法士や臨床検査技師を代表する議員も誕生した。当選した宮島喜文日本臨床衛生検査技師会会長は、同会の会員数5万人弱に対して、その倍を超える12万2833票も集めた。「宮島氏が、一般会員までくまなく回った」ことや、「後援会や決起集会には、検査技師ではない知り合いに声がけした」のが大きかったと聞く。
次回の参議院選挙は、これらのノウハウを参考に、万全な体制を敷いて臨んでほしい。