今年の大晦日も迫り、嫌なニュースばかりが連日メディアを賑わせている。日本の社会全体、日本人そのものが、正常な回路から外れているのではないかと疑いたくなる。国民の生命と健康を預かる医療・医薬業界は、決して道を踏外してはならない。
医療制度では、広域連合による後期高齢者医療制度が、来年4月からスタートする。顧みれば、膨大な医療費を必要とする高齢者の医療保険制度は、老人保健制度創設後も財政的に悩みの種だった。医療保険制度は、何回となく繰り返された小手先の改正で、辛くも制度崩壊を凌いできたのが実情である。独立した高齢者医療制度の創設は、各保険者(現役世代)の負担を軽減することが期待されているが、当の高齢者には負担増がのし掛かってくることだろう。
年末に決着した診療報酬改定では、本体が8年ぶりの引き上げとなった。ジェネリック医薬品の使用促進、後期高齢者医療制度の診療報酬体系等がポイントになるようだ。
薬価制度に関しては、新薬開発の原資ともなる革新性評価加算が設けられた一方で、社会保障関連予算の穴埋めに、健康保険組合の政管肩代わりもあるが、相変わらず薬価引き下げ(薬価ベース5・2%)が行われる。新薬価制度創設を機に、この安易な構図から早期に脱却する必要があろう。
医薬品業界の1年間を振り返れば、こちらも穏やかなニュースばかりとはいかず、製薬企業、医薬品卸、ドラッグストア再編の水面は凪ぐことがなかった。
製薬では第一三共、田辺三菱製薬に続き、協和発酵とキリンファーマが合併する。医薬品卸もメディセオ・パルタックホールディングス、アルフレッサホールディングス、スズケン、東邦薬品(共創未来グループ)という4大勢力を中心とした集約化が進められてきた。ドラッグ業界も含め、生き残りをかけた再編劇は来年以降もまだまだ続きそうである。
医薬品流通では、価格の不透明さ、未妥結・仮納入、総価取引などの不適切な商慣行を改善するため、関係者間でまとめられた緊急提言・留意事項が、中央社会保険医療協議会に提出されたことが最大のトピックスだ。
流通改善、流通改革に向けたアクションは、厚生労働省の武田俊彦経済課長が「待ったなしの状況である。最後のチャンスと思い、不退転の決意で取り組んでいただきたい」と指摘するように、関係者の決意と実行ある行動が求められている。
日本医薬品卸業連合会会員が選んだ十大ニュースのトップは、流改懇の緊急提言・留意事項のとりまとめであり、川柳の第一位も「業界の改善王子か緊急提言」だった。
そのほか、臨床開発・臨床試験では、効率性を目指してCROがSMOを子会社化する動きも加速してきた。日本だけに見られたCROとSMOの分離は、過渡期の役割を終えようとしているのかもしれない。
参院選では、薬業界の良き理解者であった藤井基之氏を国政に送り出せなかったことは、関係者の慚愧に堪えないことだった。来年は、新薬価制度議論、医薬品流通改革、ジェネリック医薬品の普及拡大などが正念場を迎えることだろう。
激動の1年となることは間違いないだろうが、できるなら毎日の紙面を明るいニュースでかざりたいものだ。