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後発医薬品を安定的かつ持続的に未来に届けるための提言~後発医薬品数量シェア80%時代に何をするべきか?~

2016年11月07日 (月)

医薬品流通未来研究会代表 藤長 義二

(連絡先:yosh6@icloud.com

はじめに

 後発医薬品については骨太の方針2015において、「2017年(平成29年)央に70%以上とするとともに、2018年度(平成30年度)から2020年度(平成32年度)末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする」と新たな数量シェアの目標値が示された。

 医療用医薬品の中でスペシャリティドラッグと後発医薬品が大部分を席巻する時代が近づいており、後発医薬品80%超の目標と同時に医療用医薬品市場は大転換期を迎えることになる。医薬品産業もこうした時代の変化への対応は必須となっている。

 医薬品流通未来研究会は、急速に進展するカテゴリーチェンジや地域包括ケア時代の到来を見据え、2015年8月に「日本の優れた医薬品流通機能を未来に届けるための提言~持続可能性と負担の公平性の確保~」を全ての医療医薬品産業関係者に向けて一つの問題提起として提案した。

 その中で、後発医薬品については先発医薬品の利益で後発医薬品の赤字を補填している現状が明らかとなり、後発医薬品のみでも医薬品卸経営を成り立たせるために後発医薬品のコストを踏まえたリベート体系の導入を提言した。

 官民を挙げての後発医薬品使用促進の結果として後発医薬品数量シェアが80%を超えたとしても、医療機関と医薬品卸から見て苦難の道以外の何物でもないのであれば、後発医薬品流通は破綻する。後発医薬品数量シェア80%の時代においても日本の優れた医薬品流通機能を持続させるために、本研究会では後発医薬品にフォーカスを当て、2015年8月の提言以降、課題が改善されたのかを検証するとともに、医薬品卸が抱えている課題と対応の方向性について新たに提言していきたい。

1.後発医薬品流通における現状と課題

 もともと日本の医薬品市場では、後発医薬品出現以前から国民皆保険制度の下で全ての国民に必要な医薬品の円滑・確実な供給が実現できていた。従って、安価な後発医薬品の売上が拡大しても、医薬品市場がそれにより拡大する訳ではなく、後発医薬品は先発医薬品・長期収載品からの置き換え効果を持つに過ぎない。これは、流通小売業の立場から見れば、減収減益の負のスパイラル以外の何物でもなく、後発医薬品の成長に伴う医薬品産業中の成長セクターは後発医薬品メーカーのみに限定される、という特徴を有している。

 急速な後発医薬品拡大は医薬品流通にどのような影響を及ぼしているのであろうか。以下の三つの視点で現状と生じている課題を考察したい。

[1]国民・消費者・患者の視点

 国民・消費者・患者に対し、「先発医薬品の安価な代替品」という後発医薬品の有する基本的価値は、十分に広報され周知されてきている。その反面、未だに医師・薬剤師には後発医薬品の「品質」に対する疑問を感じている意見が多いことも事実である。

表1 平成26年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査より抜粋

表1 平成26年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査より抜粋
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 外来診療において医師に後発医薬品を積極的に処方しない理由を尋ねた調査によると、診療所・病院医師ともに「品質に疑問があるから」という回答が約80%と非常に高くなっている。次に「情報提供が不足しているから」が約45%である(表1参照

 先発医薬品は、国際水準の品質スペックによって品質保証がなされている。一方で後発医薬品の品質についてはまだまだ医療者の理解を得られているとは言えない。

 後発医薬品は先発医薬品と品質に関して、何が同じで何が違うのかを国民に周知し、国民が自ら安心して後発医薬品の恩恵を受ける体制が必要である。

[2]調剤薬局経営の視点

表2 調剤薬局における後発医薬品割合の変化(在庫)

表2 調剤薬局における後発医薬品割合の変化(在庫)
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 調剤薬局における在庫品目数や在庫スペースにおける後発医薬品比率はもはや看過できない経営問題となっている。ある調剤薬局チェーンにおける後発医薬品在庫の割合は2011年から2016年にかけて17.81%から25.31%に増加しており、2016年では1店舗あたり全1,695品目のうち実に429品目が後発医薬品となっている(表2参照

 また、仕入数量に占める後発医薬品の割合が20.20%から36.98%に、返品数量に占める後発医薬品の割合が12.88%から22.48%と年々増加傾向にある(表3参照

表3 調剤薬局における後発医薬品割合の変化(仕入・返品)

表3 調剤薬局における後発医薬品割合の変化(仕入・返品)
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 このことから、仕入・処方・返品・廃棄・棚卸といった調剤薬局の在庫管理業務全般にかかる作業負荷が増加していることが推察できる。それに加え、在庫のない後発医薬品を調達する際には調達コスト・患者の待ち時間・医薬品卸の至急配送が増加し、特に医薬品卸の急配頻度の増加によるCO2排出量増加は環境問題でさえあると言える。

 調剤薬局は各種調剤報酬加算によって補填してきたが、後発医薬品によって減少する薬剤費に比して調剤報酬が増加するために、期待した医療費の合理化にはつながっていかないという矛盾を抱えている。


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