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必要な花粉症治療薬リスクの社会的認知

2008年01月21日 (月)

 寒さが本格化するこの季節は、花粉症患者にとって気になる時期といえる。環境省は先頃、今春のスギとヒノキ花粉について飛散量の予測(速報)をまとめたが、これによると東海から関東・東北では、昨年春より多く、北陸から九州は昨年と同じか、やや少ないと予測している。17日に東京都も飛散予測を発表したが、都内では昨春の203倍になると見込んでいる。

 患者にとっては症状が出始めると集中できず、毎日の生活もつらくなる憂鬱なシーズンといえよう。この花粉症の症状を良好にコントロールして、患者のQOLを維持するために最も広く用いられているのが抗ヒスタミン薬だが、その種類によっては眠気など、逆にQOLの低下を招くこともあるので、使用する際は十分な配慮も必要となる。

 21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)を産業界から支援している健康日本21推進フォーラムが、車を運転する花粉症の患者に対し、「花粉症の薬を服用した際に集中力や判断力の低下を感じるか」を聞いたところ、実に3人に2人(67%)が「感じる」と回答。同じく花粉症の症状を持つ受験生にも聞いているが、花粉症の薬を服用後に、8割近くが眠気を、7割弱が集中力や判断力の低下等を実感していたという。

 抗ヒスタミン薬が脳内に移行しても、必ず眠くなるとは限らず、眠気を感じないため「まったく問題ない」とする人もいる。しかし米国では,多くの州で飲酒運転と同様に、鎮静作用を伴う抗ヒスタミン薬の服用時には、自動車運転が法的に禁止されているという。

 こうしたリスクの社会的認知が進んでいる米国に比べ、まだまだ日本ではマスメディア等でも取り上げられる機会が少ない。また、果たして日常の交通事故にどれだけ関与しているのかについては、現状では調べようがないのが実態のようだ。

 現在、日本で使用されている抗ヒスタミン薬は「第二世代」とされ、眠気やだるさなどの副作用の発現率が大幅に改善され、鼻閉にも効果があることから、花粉症治療のベース薬となっている。しかし第二世代の薬でも、製品間で作用に違いがある。また、OTC医薬品では第一世代を主成分としていることも多い。それだけに、医療用に加えて一般用の医薬品も扱う薬剤師の服薬指導が非常に重要になってくる。

 抗ヒスタミン薬の服用によって、患者本人が自覚する、しないにかかわらず、集中力・判断力・作業能率が低下した状態を「インペアード・パフォーマンス」と呼んでいる。

 この自覚しにくいリスクの存在を社会に広く認知させようと、サノフィ・アベンティスでは昨年408月にかけて、ネーミングキャンペーンを実施した。一般の人や医療関係者から分かりやすい表現を募集したところ、1917作品が集まり、3万人を超える全国の医師・薬剤師の投票によって、このほど『気づきにくい能力ダウン』に決定した。この言葉が身近な存在になるかどうか、薬剤師の役割は非常に重要だろう。



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