厚生労働省保険局長 鈴木康裕
社会保障・税一体改革のもと、医療・介護の充実策の一環として、病床機能の分化・連携、在宅医療の推進、地域包括ケアシステムの構築等が目標として掲げられ、この間、医療提供体制と医療保険制度の改革が、いわゆる「団塊の世代」が全て75歳以上となる2025年を見据えて進められてきています。診療報酬と介護報酬の同時改定は6年に1度であり、25年までには18年度、24年度と2回ありますが、制度を急に変えるのは難しいため、18年度の同時改定は、極めて重要な位置づけとなります。
こうした背景のもと、今年は次期改定に向けた本格的な議論を行います。次期改定では、医療や介護が必要な状態になっても、できるだけ住み慣れた地域で生活が継続できるよう、医療・介護の役割分担と連携の一層の強化や、質が高く効率的な在宅医療の促進など、引き続き地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいきます。さらに、20年先を見据えれば、AIやIoT、ロボット等のイノベーションの活用の推進、「患者にとっての価値」に基づく報酬設定等が必要であり、十分なエビデンスのもとに、こうした取り組みの評価を盛り込み、現場での実装につなげていきたいと考えております。
また、昨今、革新的かつ非常に高額な医薬品が登場していますが、こうした医薬品に対して、現在の薬価制度は柔軟に対応できておらず、国民負担や医療保険財政に与える影響が懸念されています。
このため、昨年12月に決定した「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に基づき、「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」を両立し、「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現する観点から、今後、効能追加等に伴う一定規模以上の市場拡大に速やかに対応するため、年4回薬価を見直すことや、2年に1回の薬価調査に加え、その間の年においても、大手事業者等を対象に調査を行い、価格乖離の大きな品目の薬価改定を行うこと、その他これらの改革と合わせた今後の取り組みについて検討し、結論を得ることなど、薬価制度の抜本改革にしっかりと取り組んでまいります。
医療保険制度の持続可能性の確保の観点から、予防・健康づくりや医療の質を向上させることも重要です。このため、昨年より有識者検討会を開催し、ビッグデータを活用した保険者機能の強化・医療の質の向上に向けた検討を進めてまいりました。検討会の議論も踏まえ、今後、医療・介護のデータベースの連結による医療・介護情報のビッグデータ化を進め、基盤となるデータプラットフォームを構築した上で、審査支払機関がビッグデータ分析によるデータヘルス等を推進することで、保険者機能も格段に強化していきます。