このほど本紙が健康サポート薬局の届出状況について各都道府県の薬務主管課などへの聞き取りを行ったところ、5月末時点で全国328軒の薬局が受理されていたことが分かった。各県ごとの届出数は次号に掲載するのでここでは触れないが、昨年10月からの健康サポート薬局の届出がスタートして半年以上が経過する中、全国に約5万8000軒の薬局が存在する中での300軒台というのは、決して多い数字とはいえない気がする。
この「健康サポート薬局」制度は、一般生活者向けにはかかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に加えて、国民による主体的な健康の保持増進を積極的に支援する機能を備えた薬局が、都道府県知事等に届出を行い、その旨の表示ができるようにすることで地域生活者が健康相談しやすい薬局を分かりやすく知らせるというものだ。また、政策的には、団塊世代が75歳以上に突入する2025年までの構築を目指す地域包括ケアシステム体制を整えるための薬局機能の拡充を目指すという位置づけもある。
一方で、健康サポート薬局の届出が開始される以前からも聞こえていたのは、要件のハードルの高さである。基本的には、厚生労働大臣が定める基準で規定される「常駐する薬剤師の資質に係る所定の研修」を修了し、薬局において薬剤師として5年以上の実務経験がある薬剤師が常駐する必要がある。そのため、昨年度から日本薬剤師会などの関係団体が実施する研修には多くの参加者はあるようだが、その先の届出までには至れていないのが実情のようだ。
実際、取材等を通じて、現場の薬局から多く聞かれたのは、1人薬局薬剤師では対応が難しいことや、要件の一つである要指導薬等48種類の薬効群の設置などがネックとなるとの意見だ。さらには、健康サポート薬局の届出を行った薬局からも届出書類作成が想定以上に手間がかかるということも課題としてあるようだ。
また、届出を受理する行政側からは「届出は急ぐ必要はなく、きちんと要件が整備され問題のない状態で行ってほしい」との見解を示す向きもある。もちろん、健康サポート薬局については届出することがゴールではなく、届出を行って、はじめてスタートラインに立てるのは言うまでもない。
健康サポート薬局の将来的な数値目標については、厚労省関係者からも日常生活圏(中学校区に1軒)と想定した数字に若干、上乗せした全国1万~1万5000軒という漠然とした形では示されているが、8年後の25年までにどれだけの数が揃うのかは全くもって未知数だ。
これまで保険薬局に対しては、医薬分業にしても、ジェネリック医薬品(GE薬)の使用促進にしても、政策誘導として診療報酬上のインセンティブを設置することで推進してきた経緯があるのは確かだが、健康サポート薬局の推進についてもやはり「笛を吹かなければ踊れない」という状況なのだろうか。しばらく動向を静観したい。