「在宅医療」取り入れ講座を充実
2007年に薬剤師認定制度認証機構の認定薬剤師研修制度のプロバイダーとなり、これまでに数多くの生涯学習講座を提供している明治薬科大学(東京都清瀬市)は、今年から新たに「ゼロから始める薬局の在宅医療」をテーマとした講座を企画。実技や小グループディスカッション(SGD)などの参加型メニューも取り入れ、参加者から好評を得ている。今後は、一般用医薬品の取り扱いを含めた健康相談機能を向上させるためのテーマも充実させ、「知識が定着する講座」を提供していく。
厚生労働省が「健康サポート薬局」の普及に乗り出したことを踏まえ、同大学では昨年から、かかりつけ機能の充実に向けたテーマを積極的に採用している。
明治薬科大学薬学教育研究センター地域医療学准教授の菅野敦之氏は、国が進める「かかりつけ薬剤師・薬局」と「健康サポート薬局」の両方を充実させる上で、「圧倒的に欠けているのが在宅。実際に取り組んでいる薬局は2割に満たない」と指摘する。
ただ、薬剤師の中には、「在宅をやりたくてもどこから手を出してよいか分からない人たちが多い」ことも考えられるため、「その人たちをターゲットにした講座を企画してはどうかと考えた」と話す。
全くノウハウがない中で、ゼロから在宅に取り組むのに当たって、「苦労した部分を話してもらう」ため、講師には、5~6年前まで全く在宅訪問の経験がなかったものの、今では地域で中心的な役割を担うまでになった薬局の薬剤師を選定した。
講座ではまず、どのような書類をそろえ、何を記入すればよいのかをはじめ、どこにアプローチするのか、実際の訪問では何をすればよいのか、現場でどういうノウハウを持っていると役立つかなどについて、自身の経験に基づいて話してもらったという。
受講者は20人弱に抑え、あえて講座をコンパクトにした。座学のみのスタイルにして人数を集めるのは効率がよいが、ロールプレイやSGD、実技などを交えながら、「知識として定着するものを提供する」というのが同大学の生涯学習講座のポリシーだからだ。
受講者からは、「在宅を始めるに当たって、何をどうしたらいいか分かってきた」との声も聞かれ、好評を得ているという。
大学によっては、アクセスのよい都心部に大きな会場を借りて、1人の講師が200人超の受講生を相手に講演するというスタイルで講座を提供しているところもあるが、同大学はあえて小規模の講座にこだわり続けている。
その理由は、「知識の定着を優先するやり方が正しいと信じている」からだ。ただ、「経営面を考えると、コンパクトな講座を続けるのはなかなか厳しい」との真情も吐露する。
昨年からは、新たな取り組みもスタートさせた。同大学と星薬科大学、慶應義塾大学薬学部の3大学合同による「健康サポート薬局を考える」をテーマとしたフォーラムの開催だ。
タイムリーなテーマで、受講者の評判も高かったことから、今年の11月にも同じテーマで3大学合同のフォーラムを実施することとなった。
今回は、健康サポート薬局を取得した薬局の具体的な活動、取り組みなどを紹介するほか、ディスカッションの時間も設けている。参加者は、希望する大学の研修シールを受け取ることができるような仕組みにした。
菅野氏は、薬局のあり方が大きく変わる中、「これまでのような調剤一辺倒では済まなくなってきている」と強調した上で、「そこの部分でしっかり先取りをして“かかりつけ”や“健康サポート”にスムーズに移行するための手伝いをしたい」と意気込む。
また、これからの薬局は「一般薬を含め、未病の人の健康維持に関するノウハウを持つことが大事」とし、関連するテーマを「充実させていきたい」との考えを示した。
明治薬科大学・生涯学習講座
http://www.my-pharm.ac.jp/lifelong/index.html