地域連携サテライトセンター開設
神戸薬科大学では、早くから薬剤師の生涯研修の重要性を認識し、臨床現場との教育研究を通じた連携を図り、既存の薬剤師のスキルアップに尽力してきた。その実績が高く評価され、2007年6月には、公益社団法人薬剤師認定制度認証機構(CPC)から西日本の薬科大学で初めて「生涯研修プロバイダー」として認証(G07)を受けた。これに伴い、神戸薬科大学エクステンションセンターを設置し、様々な事業を展開してきた。今後は、地域住民に対する健康サポート活動を目的に開設された地域連携サテライトセンター(今年9月竣工)の活用により、生涯研修のさらなる充実を目指す。
神戸薬科大学エクステンションセンターの生涯研修支援プログラム(公開講座)には、「卒後研修講座」「リカレントセミナー」「健康食品講座」「薬剤師実践塾」などがある。これらの講座は、全ての薬剤師や現役薬学生・大学院生に門戸が開かれているのが特徴だ。
今年度の生涯研修支援プログラムは、19年度からの薬学生実務実習で取り入れられる「主要8疾患」に関する演題を各研修会に組み込んでおり、より充実した内容になっている。例えば、6月に開催された第43回卒後研修講座は、「薬剤師に必要な疾患(8疾患)を学ぼう その1 循環器疾患」をテーマに、「高血圧症」「心疾患」「脳血管障害」の3疾患についての演題がプログラムされ、743人の参加者の関心を呼んだ。第81回(9月)、第82回(10月)リカレントセミナーは、「免疫・アレルギー疾患」をテーマとしている。残りの「がん」「糖尿病」「精神神経疾患」「感染症」の4疾患については、来年度の卒後研修プログラムに組み込まれる。
また、6月25日に開かれた第10回シンポジウムでは「健康サポート薬局について―あれから1年皆さんの取り組みは」をメインテーマに、「包括ケアと期待される薬剤師像」について講演した紀平哲也氏(厚生労働省医薬情報室長)をはじめ7人のシンポジストが登壇した。北河修治学長も「神戸薬科大学における健康サポートの取り組み」として、神戸薬科大学地域連携サテライトセンターの役割を紹介した。
8月11日に開催される40回薬剤師実践塾の「第1回症例検討会」も見逃せない。若手薬剤師を対象にした初めての試みで、経験を積んだ薬剤師が症例を交えて薬剤を解説する。北河氏は、「生涯研修に参加する若手薬剤師が少ないので、できるだけたくさん参加してほしい」と呼びかける。
一方、健康食品に関して適正情報を提供できる薬剤師の養成にも余念がない。「健康食品講座」のより一層の充実を目指して、CPCの特定領域(P)認定制度に「健康食品領域研修認定薬剤師制度」を申請している。
ちなみに、CPCの生涯研修(G)認定制度の全認証者数は7万3175人(今年3月31日現在)で、日本薬剤師研修センターでの認定者は6万9087人。残り4088人はCPCが認証した21研修機関での認定者で、そのうち神戸薬科大学(G07)での認定者は300人強を数える。
北河氏は、9月竣工の地域連携サテライトセンターにも言及し、その設立趣旨について「“地域の健康維持・増進に貢献できる拠点になる”という大学の理念の実現を目的としている」と説明する。
具体的な目標は、地元行政や薬剤師会と連携した健康サポート活動を通じて、香粧品学など薬学の周辺領域を教育研究に取り込みながら、薬学の教育研究領域の拡大と高度化を図るというもの。さらに、「1階に開設する地域住民あるいはがんや認知症患者を対象としたメディカル・カフェは、地域に密着した学生教育の場としても活用したい」と話す。
「薬科大学と臨床現場をつなぐセミナー」も実施し、大学と薬剤師が相互に協力し合う格好で、薬学の専門知識を強化した薬剤師の育成と臨床現場に密着した大学での教育研究の展開を目指す。
北河氏は最後に、「健康サポートを神戸薬科大学のブランドとして、科学的裏づけのある健康サポートを通じて大学の三つの役割である教育・研究・社会貢献活動を展開したい」と抱負を述べる。
神戸薬科大学エクステンションセンター
http://www.kobepharma-u.ac.jp/