日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が、業界を挙げて取り組みを進めているのが「街の健康ハブステーション構想」だ。
業界の総意でまとめた「次世代ドラッグストアビジョン」を起点として、現在のドラッグストアを業態進化させ、地域の健康推進のプラットホームにシフトするというもの。JACDSが再成長目標として掲げる“2025年での10兆円産業化”に向けた成長戦略として位置づけている。
JACDSが毎年実施しているドラッグストア実態調査によると、昨年度まで1店舗あたりの売上高は3年連続で減少し、総売上高も1%台の伸びにとどまっていた。こうしたここ数年の伸び悩みの状態は、“業態の踊り場”として捉えられ、危機感を抱いた業界はJACDSを中心に、再成長すべく新しい可能性や成長軸についての研究や検討を進めてきた。
一方、今年度調査では、1店舗あたりの売上高が4年ぶりに増加へ転じた。それも前年度比3.6%増という高い伸びを示した。増加要因としては、調剤や食品、インバウンド関連などの好調が挙げられるが、その他にもJACDSでは、「24時間調剤、ドラッグストアカフェ、調剤ポイントなど、健康志向の地域ニーズを取り入れた店舗が徐々に地域の新たなドラッグストアの潜在ニーズを顕在化させている傾向が出ている」と分析している。
再成長へ向け再び進み始めたドラッグストア業界だが、JACDSでは今後、医療・介護分野に大幅に非保険サービスが導入されると見込んでいる。医療と介護の垣根がなくなるだけでなく、医療・介護と民間の非保険による健康産業がボーダーレスな時代が2~3年後に起こり、医療の概念も大きく変わってくるとの予測で、その分野がJACDSの「街の健康ハブステーション構想」だという。
現在、この街の健康ハブステーション構想によって、▽ドラッグストアと地域の行政や医療機関との連携が強化され、地域住民の生活や健康の安心・安全が確保される▽健康寿命延伸とヘルスケア産業の発展が実現し、その結果、わが国の医療制度が持続的に維持される――といったことが期待されている。
これらが実現すれば、地域住民や社会にとって、ドラッグストアはまさに、なくてはならない存在になったと言えるだろう。
ドラッグストア実態調査による16年度のドラッグストアの総売上高は6兆4916億円。25年まで10年を切る中、目標の10兆円産業化に向けてドラッグストア業界は歩みを進めており、店舗数や調剤部門、食品部門での貢献など、年々、社会における存在感を高めてきている。
業界を挙げて取り組んでいる「街の健康ハブステーション構想」の行く末と共に、社会や地域におけるドラッグストアの存在の変遷というものを注視していきたい。