厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」は、スイッチOTC薬の候補となる5成分を評価し、緊急避妊薬「レボノルゲストレル」を除く、ヒアルロン酸ナトリウム、レバミピドなど4成分についてスイッチ化が妥当と判断した。
日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が、レボノルゲストレルの服用後に妊娠に成功したかどうかの自己判断や、薬局で薬剤師が消費者に十分な説明を行うことは現状では困難と思われるなどの理由から、「OTC化は妥当ではない」との判断を示したためだ。
日本OTC医薬品協会は、医療用での使用実績を踏まえ、安全性や有効性が高いことや、欧米各国では既に一般用として販売されていることなどを理由に「適切な注意喚起をすればスイッチ化は妥当」と主張。
スイッチ化する際に留意すべき事項として、販売個数の制限や、目的外使用の防止を図るためのチェックシートの活用、薬剤師の緊急避妊に関する知識レベルの向上、専門医との連携なども挙げ、前向きな姿勢を示していた。
二つの主張に対し、異なる視点からスイッチ化に慎重な姿勢を示したのが日本薬剤師会だ。日薬の乾英夫副会長は同剤が医療用から要指導薬にスイッチされてしまうと、通常であれば3年後にネット販売が可能な第1類薬に移行されてしまう仕組みを問題視し、「現状では難しい」との見解を示した。
レボノルゲストレルは、避妊をせずに性行為が行われた後、72時間以内に服用すると高い確率で避妊することができる。連休などで医療機関が開いていない場合などは72時間を過ぎてしまうこともあり、医薬品へのアクセスを考えると、薬局やドラッグストアで薬剤師が販売できるようになる意義は大きい。
ただ、「3年後のネット販売解禁」をスイッチ化できない理由にしてしまうと今後、制度が変わらない限り、画期的なスイッチは出てこないことになってしまう。
これでは、緊急避妊を必要とする人のところに医薬品を適切に供給するためには、どうしたらいいかという視点が欠けていると言われても仕方ない。
であるならは、「薬剤師としては、医薬品を供給するための最大限の努力をしたいと考えている。ただ、3年後にはネット販売が解禁されてしまうという問題があるので、それまでに、厚労省として何らかの対応策を考えてもらいたい」といった主張をすべきだったのではないか。
実は、「薬剤師が消費者に十分な説明を行うことは現状では困難」などと言われ、何ら反論がなかったことも引っかかっている。
レボノルゲストレルが再度、議題に上がった際には、まず、薬剤師の委員から、前向きな意見が述べられることを期待したい。