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新たな漢方薬の基礎研究に期待

2017年9月1日 (金)

 ここ数年、日本東洋医学会学術総会など漢方関連学会の発表やシンポジウムの中で、漢方症例報告などの学術発表以外に、漢方薬治療の医療経済的効果や、漢方の生薬原料の安定供給などを討論するセッションなどが散見されるようになってきた。

 昨年末の4大臣合意により決定された「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に沿って、現行の薬価制度の見直し議論も進められている。現在、薬価収載されている漢方処方は148処方あるが、今回の議論の行方次第では、これら医療用漢方製剤による治療に影響を及ぼす可能性もあるのだろうか。その意味では、内外に向け、保険診療の現場での漢方薬治療の必要性を大きくアピールしていく意味合いは大いにある。

 特に人口の高齢化に伴い増加する認知症の興奮、妄想、幻覚などの周辺症状の抑制効果や、がん治療の支持療法としても有用性のエビデンスが高まっている。医師の8割以上が処方経験を持つとも言われるなど、専門医以外も漢方薬を治療に使用しているという臨床上の現状がある。

 一方、多成分系で種々の活性成分を含む漢方薬の配合生薬をベースに新規医薬品開発に向けた研究も進められている。先日、福岡で開催された第34回和漢医薬学会学術大会のシンポジウムでは、北里大学東洋医学総合研究所、国立医薬品食品衛研研究所関係者から「麻黄」の基礎研究から見出した新しい生薬エキス製剤として、エフェドリンアルカロイド(EAs)除去麻黄エキス(EFE)の開発の現状が紹介された。

 同研究グループでは、麻黄は炎症性疼痛への鎮痛作用として、高齢者の関節炎の治療に有用性が高いことを示唆。また、麻黄の新規薬効として基礎研究レベルでは肝細胞増殖因子受容体c-Metを標的とする抗がん・抗転移作用も明らかにしているという。

 麻黄には、EAsに依存する血圧上昇、動悸、排尿障害などの副作用があるため体力の低下した高齢者やがん患者に対して安全に使用することが難しい。このため麻黄からEAsを除去したEFEを開発。既に、健康成人12人を対象としたEFE安全性検討臨床薬理試験も終えているようだ。

 ただ、日本薬局方で麻黄は総アルカロイド0.7%以上含むことが求められているため、EFEは医薬品ではなく新規天然物医薬品の承認申請ガイドラインの策定が必要になるようだ。日本の医薬品承認制度が化学医薬品の承認を想定したもので、多成分系の天然物医薬品について、現行承認制度上で評価することが難しいという課題もあるといわれている。

 既存の漢方薬による治療効果の積み重ねも含めて、こうした新たな漢方薬原料である生薬成分の基礎研究が進むことで、日本の保険医療の現場に、漢方薬が今後もしっかりと存在していくことを期待したい。




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