日本小児臨床アレルギー学会の認定資格「小児アレルギーエデュケーター」を取得する薬剤師が年々少しずつだが増えている。薬局薬剤師にとっては、食物アレルギーによる症状出現時の対処法を学校関係者に指導したり、アトピー性皮膚炎患者の適切なスキンケアを保護者らに指導したりする活動を通じて、この資格取得は地域に根ざした薬局の確立にもつながるようだ。
この資格は、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギー疾患を有する小児の適切な治療やケアが実践されるように、その患者教育を担うメディカルスタッフを育成する目的で2009年に立ち上がったもの。看護師に加えて13年からは薬剤師、管理栄養士にも門戸が開かれた。
アレルギー疾患は、適切な治療や日常生活によって症状の発現をうまくコントロールできる。そのためには患者や家族らに的確な指導を行い、日常生活の注意点を理解した上で日々実践してもらうことが欠かせない。
しかし、医師が短い診療時間で行う指導には限界があり、また、専門医以外の医師が最新の知識を備えているわけではない。そこで多職種が継続的に関わって最新の正しい情報を提供し、患者や家族を支援できるようにこの資格が創出された。
資格取得のハードルは高く狭き門ではあるが、医師が立ち上げた制度であるため専門医の認知度は高い。同学会には職種の垣根を越えたスキルミクス型チーム医療の概念が根づいており、同じ仲間として情報交換しながら資質を高められるという。
小児アレルギーエデュケーターはそれぞれの医療機関や薬局で指導を担当するだけでなく、地域の様々なイベントや保育園、学校などに出向いて教育を行っている。資格取得者数は累積約400人。このうち薬剤師は50人だ。
資格を取得した薬局薬剤師に聞くと「地域からのニーズは強いが、それに応えられる人材は不足している」。その薬剤師のもとには実際に、各地から講演や研修の依頼が次々に舞い込んでいる。
最近は、学校に出向いて食物アレルギーの概要や症状、「エピペン」(アドレナリン自己注射薬)の使い方などをロールプレイ形式で教員に教える機会が増えてきた。このほか、各地の子育て支援センターなどに出向いて、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの子供を持つ保護者を対象に、食事の注意点、適切なステロイドの使い方、経皮感作による食物アレルギーを防ぐために重要なスキンケアの方法などを分かりやすく説明する機会も少なくない。
近年アレルギー疾患対策基本法や基本指針が制定され、国全体で取り組みを進める機運が高まってきた。その期待に応え、地域に根ざした薬局作りを進める上でも、薬局薬剤師が小児アレルギーエデュケーターの資格を取得する意義は大きいといえるだろう。