相次ぐ薬局チェーンの調剤報酬不正請求事件、財務省からの指摘、行政事業レビューの議論と続き、薬剤師の技術料に対し、かつてない厳しい視線が集まっている。薬剤師の技術料が適正なのかという根本的な問題が国民から問われている。
2年前の規制改革会議の公開討論では、医薬分業のメリットが大きな焦点になった。院外と院内処方の3倍の格差が問われた結果、コストに見合ったメリットを示すために厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」を公表し、2016年度診療報酬改定では「かかりつけ薬剤師」制度が導入された。さらに敷地内薬局が解禁され、薬剤師を取り巻く環境は大きく動き、また揺さぶられた。そんな中での技術料に対する疑問の再燃である。
しかし、過去を振り返ると対応する時間はあった。5年前の本紙記事は、日本薬剤師会幹部の「わざわざ院外薬局で薬をもらう必要があるのかという素朴な疑問に対し、どれだけ薬剤師が国民の安全・安心に寄与しているかしっかりと説明し、その姿を見せていかなければならない」との講演での発言を伝えている。そこから何が変わったのか。
今年の行政事業レビューでも同じ問いが突きつけられ、「わざわざ院外薬局で薬をもらう必要があるのかという素朴な疑問」に対し、未だ納得いく回答を示せていないことが明らかになった。この間、診療報酬をめぐる議論は、限りある医療費を有効活用するためエビデンス重視の傾向が一層鮮明になっている。こうした状況にあってなお、薬剤師の仕事とその対価に理解を得るためのエビデンスを作ることについて、ほとんど実行された形跡が見えなかった結果が現在の厳しい評価につながったのではないだろうか。何がエビデンスかという議論はあるにしても、薬剤師の仕事をアピールできる確固たる材料を一つでも多く集めて防衛しなければ、いずれ同じことが繰り返される。
もちろん、薬剤師の仕事は国民に理解してもらえていない部分も多い。例えば、調剤段階で処方の誤りに気づき、副作用を防いだとしても、薬を渡す段階で誤りは修正されており、患者には見えない。一方で、薬剤師が疑義照会を行うことにより水際でエラーを防ぐヒヤリ・ハット事例が最近急増している。このように、一つでも具体的に患者の安全を守っている事例を広くアピールしていくことが急務である。
18年度診療報酬改定は技術料の引き下げなど厳しさが一層増すだろう。しかし、現状をしっかり見つめた上で、今度こそ薬剤師の仕事を国民に理解してもらい、技術料の正当性を訴える理論武装を早急に進める必要がある。今それができなければ、せっかく6年間も薬学を学んで社会に出てくる若い薬剤師たちに何を残せるだろうか。薬剤師の価値を示すことは、未来への責任でもある。