医薬品産業に携わる企業の2018年3月期第2四半期決算が続々と発表されたが、製配販それぞれの領域において、それこそ各社各様の業績内容が明らかになった。民間企業であるから利益を上げなければ、企業の成長はおろか、業務に従事している社員や家族を養っていくことすらできない。それゆえ、全社があらゆる手段を駆使して利益獲得を目指している。
医療用では、効き目が素晴らしい医薬品が多く存在するが、今では延命維持、症状緩和にとどまらず、完治までしてしまうものも出現している。当該患者にとっては本当にありがたいことこの上ない時代となった。しかし、これら製剤はとてつもなく高額であることも事実だ。日本の医療保険制度、薬価制度においては、国民全員に公平な医療を届ける使命を担っており、制度自体を崩壊させかねない財政負担増は何とかして避けなければならない。それでないと、禁句とされている「金持ちしか生き残れない」事態を招きかねない。
現在、薬価制度の抜本改革に向けた議論が進められており、年末にかけて佳境に突入する。抜本改革の大義には「国民皆保険の持続性」「イノベーションの推進」の両立と、「国民負担の軽減」「医療の質の向上」が掲げられている。全てを完遂するには難問が山積しているが、知恵を出し合ってできる限り多くの関係者が満足できるランディングポイントを見出してもらいたい。
利益を生む商品である医薬品だが、一方で、生命に直結するため安全に関しては他の商材とは一線を画す別格の義務を負っている。世界一とも言われる厳しい規制がかけられていた日本でも1月にニセ薬が流通してしまった。
厚生労働省は、「医療用医薬品の偽造品防止のための施策のあり方に関する検討会」の中間取りまとめを受けて、10月5日に薬局開設者、卸売販売業者、店舗販売業者、配置販売業者が順守すべき事項について省令を改正し、一部を除いて来年1月31日に施行される予定だ。
その後、10月19日、11月10日と開催され、GDP準拠のガイドラインによる自主的取り組みなどの対応方針案が示された(前号既報)。こちらも年内には取りまとめられる予定である。
製薬企業では、薬価の影響も受けて売上・利益が見込めない長期収載品を譲渡するところも出てきた。新薬開発へ資源を集中するためであり、理解できる。医薬品卸や医療機関、薬局も経営を安定させるための努力を惜しまない。しかし、ここで今一度、薬は関連企業が儲けるためのものではなく、患者が治療するためのものであることを忘れないでほしいと願う。
絶対にあり得ないが、患者がゼロになれば、この産業界は消滅する。血眼になって儲けだけを追求する姿勢は見苦しい。崇高な理念を持って企業を発展させてこそ、日本の医薬品産業だと確信する。