今月から新たな診療・調剤報酬が実施された。今回の調剤報酬改定で印象的だったのは、地域の医療機関と薬局が連携して業務を行うことで算定要件を満たす項目が新設されたり、評価を手厚くしたことだ。
累次にわたる改定の第2弾ということもあり、薬局によっては、今回の改定を経ても調剤のみで何とか経営を維持できるところもあるかもしれないが、だからといって、連携項目の算定を後回しにするようなことがあってはならない。
「対物業務から対人業務へ」という方針のもと、調剤のみで点数がもらえる時代は終わりを迎えつつあるだけに、しっかり連携項目を算定できるようにしておくことが大事だ。
診療報酬上の評価は、データに基づいて行われるため、エビデンスを示すことが必要になるが、とかく、薬剤師・薬局の業務に関しては、なかなか目に見える形で示せていないのが現状だ。
そうした中、連携項目の一つで、今回の改定で新設された「服用薬剤調整支援料」(月1回、125点)は、薬局の取り組み状況によっては、「多剤・重複投薬の適正化」という大きなエビデンスになり得るのではないかと考えている。
同加算は、「薬剤総合評価調整管理料」(月1回、250点)を算定する医療機関と連携して内服薬の処方を適正化する取り組みを評価するもので、内服開始後4週間以上を経過した時点で6種類以上の内服薬が処方されている患者について、2種類以上減薬した場合に算定できる。
厚生労働省の調査によると、70歳以上の患者が服用している内服薬の平均は6.6種類で、そのうち6割が現在、服用している薬剤を減らしたいと思っているようで、多剤・重複処方の適正化は、喫緊の課題となっている。
これだけ社会問題化し、診療報酬上で加算が新設されれば、やがて解消に向かうだろう。しかし、目に見える形で薬局業務のエビデンスを示していくためには、現在の多剤・重複投薬が多い状況から、同管理料を算定する薬局が増え、一気に多剤・重複投薬が減ったというデータが必要になる。
数年後に、多剤・重複処方が適正化に向かっていった状況から、いくら頑張ってもインパクトある数値は出せない可能性が高く、エビデンスになり得るデータを得るために、薬剤師・薬局が多剤適正化に一斉に取り組むタイミングは今しかない。
これだけ多剤・重複投薬が問題になるということは、薬剤師がしっかりと職能を発揮してこなかったという見方もできる。であれば、薬剤師・薬局には今から本気で多剤・重複処方を適正化するという覚悟が必要になる。
未だに医薬分業バッシングがくすぶっているだけに、ぜひとも、危機意識を持って取り組んでもらいたい。