今年1月23日に「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」が、厚生労働省医政局長と保険局長の連名で通知され、4月から適用されている。医薬品流通は、公的医療保険制度の中で民間同士が契約取引する商行為であることから、これまで国は直接関与してこなかった。
今回のガイドラインには、初めて「国主導で」と明記され、これまでの延長線上ではない取り組みを促す意味合いを持つ。
本紙5月23日号の日本医薬品卸売業連合会企画の対談で、武田俊彦医政局長が、「足並みを揃えるには、国が示す効果が大きいと感じる」と述べているが、業界が足並みを揃えて取り組むことになると、そこには大きな壁が存在する。私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、いわゆる「独占禁止法」である。
厚労省医政局経済課は5月7日、薬卸連に宛てて、ガイドラインに係る事業者団体の取組における独占禁止法上の留意点に関する質疑応答集を事務連絡した。
このQ&Aは5項目ある。まず、「ガイドライン記載の内容であっても、団体としての意思決定によって、構成事業者の自由かつ公正な取引(価格、供給数量など)を制限する等の行為」は独禁法上禁止されていると解説した。
次いで、相談・討議、解釈の情報交換は問題ないが、共同で価格・取引条件等の決定、決定事項の強制は問題ありとしているほか、「団体としての明示の決定がなされなくても、個別構成事業者が自らの対応を会合で示すこと等を通じて、構成事業者間で価格・取引条件の競争制限に係る暗黙の了解若しくは共通の意思が形成され、これによって市場の競争が実質的に制限されれば問題となる」とも説明している。
そのほか、カルテルの禁止、独禁法コンプライアンスの取り組み、ガイドライン遵守の広報媒体作成に関するQ&Aを示している。
これを受けて薬卸連は5月18日から今月7日にかけて、全国7地区で流通改善ガイドライン説明会を開催した。説明会では、会員各社が主体的にガイドラインを受け止め、公正かつ自由な競争を阻害することがないようコンプライアンスを徹底しつつ、ガイドラインを踏まえた交渉を行っていく必要性等について周知を図った。
これまで長く、医療用医薬品の流通近代化・流通改善は、当事者の自主性に任せていた。一定の進捗は見られたが、肝心なところで萎える傾向が続き、国民や国に根本的な流通改善が図られたという印象を与えられずにいた。
今回の国主導のガイドラインの持つ意味は、従来のものとはまるで違うことを肝に銘じて、流通関係者全員が取り組まなければならない。何度も聞いた言葉だが、不退転の決意と実行が今度こそ本当に必要だ。ガイドラインの遵守と公正な取引の両立が求められている。