先月14日、政府の国家戦略特別区域諮問会議が愛知県、福岡県福岡市、兵庫県養父市が提案していた遠隔服薬指導の事業計画を承認。この3区域に限定した形で、テレビ電話などオンラインを活用した服薬指導(オンライン服薬指導)の実施が可能となった。
既に、愛知県や福岡市では、先月21日に全国初となるオンライン服薬指導実施薬局の登録認定も行われている。これら登録薬局では、オンライン服薬指導のデモンストレーションを報道関係者に公開するなど、国家戦略特区を活用した同事業について積極的なアピールを開始している。福岡市では先月28日に実施、愛知県では今月10日に行う予定だ。
3自治体が取り組むオンライン服薬指導事業の経過では、愛知県は先月18日から県医薬安全課が、県知事の許可を受けた薬局開設者(名古屋市、豊橋市、岡崎市、豊田市は除く)を対象に登録申請受付、事前相談の対応を開始。特定地域は西尾市一色町佐久島、新庄市、知多郡南知多町日間賀島、知多郡南知多町篠島、北設楽郡設楽町、北設楽郡東栄町、北設楽郡豊根町村。特定区域内でも薬局が近くにある場合は事業の対象としていない。現時点で稲沢市内の1軒で登録が完了しているが「事前相談は多い」(県医薬安全課)という。
福岡市は、15日から市地域医療課が窓口となり、市内全薬局を対象に、登録申請書の受付を開始。特定地域は東区(勝馬校区、志賀島校区)、早良区(曲渕校区、脇山校区の一部)、西区(小呂校区、玄界校区、能古校区)。現時点で2薬局が登録を完了。このほか「5薬局から登録申請を受け付けている」(市地域医療課)という現状だ。
兵庫県養父市は、市内15軒の薬局を対象にオンライン服薬指導の登録薬局を募集するが、登録申請は兵庫県薬務課が窓口となり受け付ける。県薬務課によると、10日に対象薬局向けの事前説明会が開催するという流れのようだ。
先月15日に閣議決定された「骨太方針2018」の「次世代ヘルスケア・システムの構築プロジェクト」では、服薬指導を含めた「オンラインでの医療」全体の充実に向けた取り組みを進めるという趣旨が明記されている。
2018年度診療報酬改定では、医科点数で「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」が新設されるなどオンライン医療に向けた体制が整いつつある。
オンライン服薬指導を行う上での「服薬指導の対面の原則」という縛りが、今回の国家戦略特区の活用で条件はあるものの法的にはクリアされた格好となる。残るは調剤技術料など診療報酬上の解釈、調剤した医薬品の配送にかかるコスト負担のあり方だろう。
各自治体の取り組みを通じて、現実的な運用には欠かすことのできないこれらの点について、どのように対処していくのか注目していきたい。