■「イリボー」は継続審議
薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は25日、三つの新薬を審議し、失明の原因として注目されている加齢黄斑変性症(AMD)に対する核酸医薬(アプタマー)「マクジェン」と、手術時の麻酔の覚醒を助ける配合剤「アトワゴリバース」の二つを承認して差し支えないとした。今回、男性での下痢型過敏性腸症候群の治療薬「イリボー」は、添付文書の注意書きを明確化する必要があると判断され、継続審議となり、5月の部会で再審議する。
承認の可否を判断する最終関門となる薬事分科会は6月に開催予定で、アトワゴリバースは報告扱い、マクジェンは新しい作用機序を持つため改めて審議される。今後、イリボーも部会で承認が認められ、3新薬とも順調に分科会を通過すれば、7月中には承認となる運び。
<審議品目>
▽マクジェン硝子体内注射用キット0・3mg(ファイザーが製造販売):有効成分はペガプタニブナトリウム。効能効果は、中心窩下脈絡新生血管を伴う加齢黄斑変性症。原体・製剤とも劇薬に指定される予定。再審査期間は10年。市販後全例調査が承認条件となった。
AMDは、網膜の中心部に異常な血管が発生することで、網膜組織を破壊し、高齢化に伴い増えるとみられ、今後の失明の原因の一つとされる。患者数は国内で3万人前後とみられ、オーファン指定を受け、2007年3月に申請されていた。既に海外では欧米含め52カ国で承認済み。
同剤は、ポリエチレングリコールを結合させた抗VEGFアプタマーと呼ばれ、血管内皮増殖因子(VEGF)と結合し、AMDの原因となっている血管新生を妨げる作用を持つ。硝子体に注射して用いる。
同じ効能を持つ薬剤としては、既にノバルティスの「ビスダイン」(成分名:ベルテポルフィン)がある。同剤は静注し、正常組織に影響しない非発熱性のレーザー光を照射することで成分を活性化させる作用を持つ。
▽アトワゴリバース静注シリンジ3mL、同6mL(テルモが製造販売):有効成分は、ネオスチグミンメチル硫酸塩とアトロピン硫酸塩水和物。効能効果は「非脱分極性筋弛緩剤の作用の拮抗」で、麻酔の覚醒を助けるもの。これまで医療現場では両剤を混合して多用されていたといい、予め配合することで、混合の誤りや混合時の感染事故の防止を図る。製剤は劇薬。再審査期間は4年。
▽イリボー錠2・5μg、同5μg(アステラス製薬が製造販売):有効成分はラモセトロン塩酸塩。効能効果は、男性における下痢型過敏性腸症候群(IBS)
同剤は、消化管運動や痛みに関与するセロトニン(5”HT3)受容体拮抗作用を持つ新しいIBS治療薬で、成分は制吐剤「ナゼア」と同じだが、用法用量が全く異なり、新効能、新用量医薬品として審査された。
厚生労働省医薬食品局によると、審議では製剤自体に問題は指摘されなかったが、効能を男性に限ったものの、女性では有用性が示されてないことを明確に書くことが求められ、継続審議扱いとなった。治験では女性では有効性が十分に示されなかった上、女性に血中濃度が上がりやすく副作用が出やすいおそれが確認されたため、女性に使用しないことを強調する必要性があると判断されたという。
原体・製剤とも劇薬で、再審査期間は4年。部会を通過すれば、分科会には報告扱いとなる予定。
■2成分の一変申請を報告
<報告品目>
▽イオメロン350、同シリンジ(ブラッコ・エーザイが製造販売):有効成分はイオメプロール。コンピューター断層撮影での造影に用いる薬剤だが、今回、「肝臓領域のダイナミックコンピューター断層撮影」での用法に「体重に応じて18mL/kgを静脈内投与することができる(最大投与量135mL)」の新用量と、シリンジ製剤の新剤形を追加した。従来の用量では十分な造影ができなかったため用量を引き上げた。
▽アリクストラ皮下注1・5mL、同2・5mL(グラクソ・スミスクラインが製造販売):有効成分はフォダパリヌクスナトリウム。効能効果に「腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」を追加する。優先審査扱い。
これら二つの報告品目は5月中にも承認の予定。