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米国の大手安全性試験受託機関「ハーラン」のステファン・サリバンCEOは本紙の取材に対し、7月には子会社のスイスRCC、英セーフファームラボラトリー(SPL)を完全統合し、新たな社名で再出発を図っていく考えを明らかにした。その上で安全性試験CROをめぐる業界再編の可能性にも言及、「われわれもさらに吸収合併を行っていく予定で、将来的には世界第3位の規模を目指す」と方向性を語った。
ハーランは昨年、化学物質の試験に強いSPLを買収し、安全性試験受託業務を拡充した。サリバン氏は「ハーラングループの受託業務量を増やし、各施設の特色を伸ばしていくことが買収の一番の目的」と狙いを話した。医薬品の安全性試験はRCCが請け負い、化学物質に関してはSPLが担当する形で、ラボの役割分担を明確化する。グループ内で幅広いサービスを迅速に提供できるメリットを、顧客にアピールしていく考えだ。
SPLの買収によってハーランは、英国に拠点を確保し、安全性試験CROのトップ5の一翼を担う規模になった。特に安全性試験の受託は、世界的に競争が激化しており、サリバン氏は「今後も、吸収合併による業界再編は十分に考えられる」と指摘。「われわれもさらに吸収合併を進め、規模の拡大を目指していく」との考えを示した。ただ、大手安全性試験CROと規模で勝負するのではなく、サービスの質、顧客満足度で特色を打ち出し、差別化を図りたいとしている。
ハーランが描くもう一つの戦略は、中堅製薬企業からの受託促進。安全性試験CROの市場規模は、約3500億円と言われている。そのうち大部分はグローバル製薬企業からの受託が占めるが、サリバン氏は「中堅製薬企業の場合は1社当たりの受託件数は少なくても、企業数が多いので相当のシェアがあることは間違いない」と期待感を示す。
中堅製薬企業は、大手と比べて自社で対応できる業務が少ないため、アウトソーシングの割合は高い傾向にある。サリバン氏は「中堅製薬企業は、外部委託に頼っているところも多い。その意味では決して無視できない市場だ」と強調している。
■高まる製薬企業の外部委託
国内では、安全性試験業務の約30%がアウトソーシングされていると言われるが、今後は残る約70%についても、製薬企業が外部委託してくる可能性が高いと見られている。実際、安全性試験のアウトソーシングの割合は年々増加傾向にあり、安全性試験を実施するノウハウもCROに集約されつつある。
特にグローバル競争に鎬を削る大手製薬企業は、自社の安全性試験がコスト的に大きな負担になっているのが現状だ。サリバン氏は、「製薬企業が自社で安全性試験を行うと多額のコストがかかるため、これからアウトソーシングは急速に拡大してくるだろう。将来的に安全性試験業務のほとんどがアウトソーシングになることは間違いない」との見通しを示す。
こうしたビジネスチャンスを見据え、ハーランは子会社のRCC、SPLを統合し、新たな社名のもとに結集して再出発することを決めた。顧客への利便性をさらに高めることが目的だ。既に新社名は、候補の絞り込み段階に入っている模様で、7月には新生ハーランが誕生することになる。
サリバン氏は、「われわれの仕事はサービス業だと思っている。サービス業で最も大事なことは、社員が希望を持って働ける企業にすること。そうしなければ顧客に満足されるサービスは提供できない」と統合の意義を強調する。
新たなスタートを切るに当たって、ハーランはラボの増設、改築と共に、スタッフの増員、教育に多くの投資を行ってきた。サリバン氏は「来年にはその効果が出てくるだろう」と述べ、さらなる成長に自信を見せている。
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