厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で、「オメプラゾール」「ランソプラゾール」「ラベプラゾール」のプロトンポンプ阻害剤(PPI)3成分のスイッチ化が見送られた。
議論の流れに大きく影響したのは、厚労省が毎年実施している「一般用医薬品販売制度定着状況調査」(覆面調査)の結果だ。濫用などの恐れがある医薬品を「質問されずに購入できた」薬局の割合が36.6%に上っていたことに対して、委員から懸念の声が相次いだ。
覆面調査の結果を見ると、濫用などの恐れのある医薬品を「質問されずに購入できた」薬局の割合は、2014年が27.1%だったのに対し、15年に33.4%、16年に36.6%と、年々高くなっており、適切に販売できていない実態が浮かび上がった。
この結果については、日本薬剤師会の乾英夫副会長が会議で、濫用などの注意が必要な医薬品の多くが「指定第2類」に分類されており、薬剤師以外の「登録販売者が対応しているケースもある」と分析した。仮に、薬剤師が販売していれば、「適切に対応できたはず」ということが言いたかったのだろう。
しかし、薬剤師に取り扱いが限定されている「要指導医薬品」に関する覆面調査結果を見ると、販売時に「情報提供を行った」店舗の割合は、14年が96.1%、15年が83.3%、16年が86.5%で、適切に販売できているとは言いがたい状況だ。
そもそも、多くの個店薬局が「置いても儲からない」などの理由から、一般薬の販売をドラッグストアに丸投げしている状況で、「薬剤師が対応していれば……」という主張にどれだけの人が納得するのだろうか。
薬剤師・薬局は、PPIのスイッチ化見送りの最大の理由が、製品そのものの安全性の問題ではなく、「販売体制の不十分さ」になったことを重く受け止めるべきだろう。
会議では、委員から「36.6%」という数値が改善された時点で、再びPPIを議論の俎上に載せるよう求める意見が出た。17年度の調査結果はまだ公表されていないが、ここ数年は、10~12月にかけて調査を実施し、翌年5、6月に結果が公表されている。
日薬も、販売ルールの遵守状況改善に向け、各県に通知を出す方針を示したが、結果が出てくるのは早くて来年の5月ということになりそうだ。
医薬品インターネット販売の議論でも、対面の原則や薬剤師が関与することの重要性が再三主張されたが、覆面調査の結果が、それに見合うものになっていないことは明らかだ。薬剤師には、「もう後がない」という思いで本気になって取り組んでもらいたい。