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日本発メガファーマへの飛躍に期待

2018年08月17日 (金)

 今年3月、武田薬品はアイルランドのバイオ医薬大手シャイアーの買収計画を発表し、薬業界に激震が走った。シャイアー買収のための株式取得額は6兆8000億円で、2016年にソフトバンクが英国半導体会社を買収した3兆3000億円を大幅に上回る過去最大の買収額となる。

 売上高1.8兆円、世界18位の武田薬品が、売上高1.7兆円、世界19位のシャイアーを買収すれば、売上高3.4兆円、世界9位のグローバルメガファーマが誕生する。

 企業買収は、世界の大手企業の重要な成長戦略の一つになっており、ロシュやファイザーのような買収による新薬開発・市場開拓強化を業績拡大の糧とした事例も少なくない。「企業買収による事業拡大は、外資系企業の常套手段」と言っても過言ではない。

 長谷川閑史前武田薬品社長は、クリストフ・ウェバー社長を含めた多くの外国人経営者の登用理由を「日本人はグローバル経営に慣れていないため」と述べている。今回の同社の大型買収提案は、おそらく、外国人社長でなければ、成し得なかったと考えられる。

 今後、武田薬品は、大型買収に伴う「財務悪化懸念」と「市場存在感」とのリスクとベネフィットを、いかにしてうまくコントロールしていくかが大きな課題になるだろう。

 6月の定例株主総会では、ウェバー社長が、「シャイアーの買収によって、米国に強く、収益力と研究開発力の高い製薬企業になる。強い競争力を持つことで、年間配当180円は維持できる」と断言した。

 財務悪化への不安を懸念する株主質問にも、「シャイアーはロンドン証券取引所に上場しているため、英国の法律で買収の詳細全てを開示できない」とした上で、「クロージング(買収契約締結)後は、買収のベネフィットをより具体的に理解してもらえるようになる」と強調した。

 シャイアー買収発表後には下落率2割を超え、6月19日に年初来安値(4203円)を付けた株価についても、「買収発表前には6000円を超えていたが、クロージング後には回復する」と言い切った。

 今後の焦点として、買収成立に必要なシャイアーの株主総会の75%の賛同と、2019年初頭に開催される武田薬品の臨時株主総会での新株発行承認が注目される。新株発行後、新会社での武田薬品の株式比率は約50%となるため、「武田は日本市場を捨てた」との厳しい声も聞かれるが、ウェバー社長は、「武田薬品は日本の企業で、議論の余地なく本社を日本に置くべきだ」と力説している。

 武田薬品のメガファーマへの道程は、国民皆保険や薬価などの日本の医療制度・市場が礎となっているのは間違いない。武田薬品には、日本発のグローバルメガファーマとしての飛躍を望みたい。



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