この夏、京都大学医学部付属病院と書かれた背景で会見する報道を目にする機会がいく度かあった。正確には、京都大学iPS細胞研究所CiRA(サイラ)との連携した治験や臨床研究の会見である。
7月30日には、「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」を8月1日から開始すると発表した。CiRAの資料によると、細胞移植による安全性・有効性を検討する医師主導治験(第I/II相)と、細胞移植時における免疫抑制剤タクロリムスの安全性・有効性を検討する医師主導治験(第III相)の2課題が行われる。実施予定者数は7人で、観察期間は1患者当たり移植後2年間となっている。
治験は、CiRAで構築している「再生医療用iPS細胞ストック」から提供されたiPS細胞をドパミン神経前駆細胞へ分化させ、ドパミン神経前駆細胞を被験者の脳に移植する(他家移植)。また、細胞移植後に免疫反応が起こる可能性があるため、この治験では、既に臓器移植等において臨床実績のあるタクロリムスを細胞移植時の免疫抑制剤として使用するという内容である。
そして、先週20日、「血小板減少症に対するiPS細胞由来血小板の自己輸血に関する臨床研究」の再生医療等提供計画を7月20日に厚生労働大臣に提出して、今月29日開催予定の厚生科学審議会・再生医療等評価部会で初回の審議に付されると発表した。
その目的には、「再生不良性貧血で、かつ血小板輸血不応症を併発している特定の患者の末梢血単核球から作製するiPS細胞を経由して誘導される血小板を当該患者に投与し、iPS細胞由来血小板製剤の安全性について検証を行う」と書かれており、患者自身の細胞から作製した血小板であれば、自身の免疫細胞に破壊されず輸血の効果が得られることが期待されている。ぜひ、期待だけで終わらないことを願う。
もちろん、再生医療等製品を開発しているのはCiRAだけではなく、国内外の製薬企業やベンチャー企業も開発を急いでいる。17日本紙既報の通り、CiRA発のベンチャー「iHeart Japan」(アイハート・ジャパン)が、文部科学省・経済産業省の2018年度大学発ベンチャー表彰で学会会長賞を受賞した。
海外では、再生医療を国家プロジェクトとして取り組んでいる国もある。2012年にiPS細胞作製でCiRAの山中伸弥所長がノーベル生理学・医学賞を受賞した。いわば再生医療等製品の本家とも言えるCiRAをはじめ、日本の製薬企業、ベンチャー、アカデミアなどが率先して、これからも治療を待っている患者や家族の福音となるような結果を生み出していってほしい。再生医療等製品の保管や流通も含めて、医薬品業界を上げた取り組みが加速している。