大阪府薬務課は今年5月に、2018年度から2年間に、府下第1種医薬品製造販売業44社の立入調査を実施する方針を打ち出し、関係団体や企業等に通知を発出している。中でも、大阪府独自の取り組みとして、立入調査時の冒頭に30分ほどかけて、薬務課長自らが各企業の経営陣と意見交換を行うなど、異例の取り組みが行われている。
5月の通知ではこの意見交換対象の経営陣について「薬事に関する業務を行う役員のうち、最終責任を有する者」と記載されているが、実質は社長を想定。この立入調査を開始した7月19日から今月8日までに3社(堀井薬品工業、ニプロESファーマ、山善製薬)の経営者との意見交換を実施したが、いずれも社長が同席して行われた模様だ。
大阪府が、今回のような立入調査を実施している背景には、ここ数年、化学及血清療法研究所や原薬製造メーカーの山本化学工業など、製造販売承認書と製造実態に相違が生じた事例や報告義務対象の副作用が定められた期間内に報告されていない事例が散見されたことがある。
そうした状況から厚生労働省は昨年6月26日付で通知「医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実態について」(医薬・生活衛生局長通知)を発出。これを受け、大阪府も医薬品製造販売業者への調査方針を再検討。
同年9月8日に医薬品製造販売業の立入調査方針として▽総括製造販売責任者(総括責任者)から経営陣への意見具申等▽総括製造販売責任者等の適切な機能▽製造業者等に対する製造管理および品質管理の定期的な確認▽安全管理情報の収集の範囲▽その他(コンプライアンス教育、薬害教育)――を重点項目とする方針を示した。
既に実施した意見交換の内容としては、まずは、厚労省医薬・生活衛生局長通知の認識。現在の総責の役職そして総責から経営陣への意見具申などを尊重する重要性。組織内の三役(総括製造販売責任者・品質保証責任者・安全管理責任者)の指揮命令が機能していること、製造業者に対する管理監督や変更などの情報の入手、立入調査の重要性。また、副作用等の報告漏れを防止するために営業者などへの点検の重要性。製造販売後安全管理情報の収集強化の重要性。さらには代表取締役をはじめとする経営陣に対する計画的な薬害教育、ガバナンス強化のための方策などについて意見交換が行われた。
大阪府は、「三役がその責務を果たすうえで、経営陣の理解と配慮が不可欠」との考えで、コンプライアンスのより一層の推進に向け、試行的に意見交換を取り入れ、協力を求めていくようだ。今後、府のこうした取り組みが、一定の成果を収めることができれば、他府県に波及していく可能性もある。まずは、今後の動向を注視したい。