一般の国民が医薬品に寄せる関心は高い。「OTC」は、テレビCMの効果もあり、国民の認知度も急上昇してきた。また、医療用でも企業名と質の高さをリンクさせた広告も出始め、メーカーの知名度・イメージをアップさせようとしている。一般用、医療用を問わず、医薬品は健康的な生活を送るためにも、疾患を治療する医療でも不可欠なものとなっている。
だが、医薬品がどのような技術や機械で製造されているのか、気にする患者・消費者はまずいないだろう。それほど、日本の医薬品の品質、効果、安全性への信頼は確立されていると言えよう。信頼は一日にしてならず。技術者たちが日々精進して努力を重ねてきた結果である。
先月、製剤機械技術研究会の2008年度総会・特別講演会が東京で開催された。製機研の会員数(1月現在)は206社で、事業体会員615人、個人会員248人の計863人が加盟している、日本で最大規模の製剤機械技術に関する研究組織体である。
今回の総会では役員改選が行われ、寺田勝英氏(東邦大学薬学部教授)からバトンを受けた川島嘉明氏(愛知学院大学薬学部教授)が会長に就任した。川島新会長は、製機研を「会の目的、趣旨も、財政もしっかりしている成熟した会」と評した。
91年に創設された非営利団体であるが、このような団体によく見られる財政的困窮は微塵もなく、活動においても総会・特別講演会からはじまり、大会、講演会、シンポジウム、ワークショップ、工場見学会、教育研修会、県単位の研修、会誌の発行と精力的な活動が行われている。そのほか、GMP委員会、国際委員会などの各委員会を含めた開催総数は実に139回を数え、川島氏の評価は当然のことだろう。
特に、教育研修の充実ぶりには感心させられる。内用固形製剤(8回)、無菌製剤(5回)、半固形製剤(2回)の研修会は、毎回、募集即定員オーバーとなるほど好評のようだ。また、奈良県で実施していた研修会は独立し、今年度は富山県で研修会を行うなど、県単位の研修会も精力的に支援している。このように、国民に広く知られることなく日夜研鑽を継続して積み重ねたことで、今日の「薬は安全に普通に造られている」という信頼が築かれたといえる。
7月には、アジア最大規模の医薬品製造機器・技術展示会・商談会である第21回インターフェックスジャパンが開催される。昨年の来場登録者数は、3日間で延べ5万人以上に達した。大手機器メーカーから、良い意味での町工場規模のメーカーまで、様々な企業が出展するが、規模にかかわらず共通しているのは、腕に自信ありのプロフェッショナル技術屋だということだ。小さい企業でも、確かな技術を発揮して、独自の革新的機器を開発することによって、大手製薬企業に製剤関連機器が採用されている実績も散見される。
患者や消費者に聞かれることはなくとも、医薬品に携わる専門家の知識の一端として、医薬品の開発過程や、製造に用いられている製剤技術・機械などを知っておいて損はないだろう。医薬品産業界には、画期的医薬品の開発から、製剤技術と製剤機械、革新的医療機器の開発・普及において、“技術立国”を標榜する日本の面目躍如を期待したい。