わが国の高血圧有病者数は4300万人に上り、その内訳は、未治療・認知なし1400万人(33%)、未治療・認知あり450万人(11%)、治療中・コントロール不良1250万人(29%)、治療中・コントロール良1200万人(27%)となっている。わが国の血圧コントロール率(27%)が、米国のそれ(53%)と比べてかなり低い。
ちなみに、診察室血圧140/90mmHg以上の日本高血圧治療ガイドライン(JSH)が定める内降圧治療薬開始基準に合致する国民は3100万人に上る。
高血圧治療率は、男女とも年齢が高いほど高く、2010年には70歳代男女で60%、60歳代男女で50%以上であるが、特に若い年代では不十分だった。
血圧コントロール率は、過去30年間において男女とも全ての年齢階級で上昇傾向にあるものの、10年において男性で30%、女性で40%程度にとどまっている。
その一方で、高血圧の認知率は67%(NIPPON DATA2010)と高い。「高血圧が循環器疾患を引き起こす」危険性は広く知られているものの、治療率・コントロール率が悪いのが現状となっている。
治療率、コントロール率は年齢や血圧測定方法によって大きな影響を受けるため、厳密な国際比較は難しい。だが、わが国のこれらの数値は、先進国の中で決して高くはない。
未治療高血圧者は高血圧の怖さを知っているのに、なぜ受診しないのか。その主な要因として、「自覚症状がないのに、今すぐ治療が必要な理由が分からない」「そこまで悪いと思わない」「病院に行ったら止められなくなる」など、「高血圧症では、行動を起こす必要性が実感として分からない」ことが指摘されている。
さらに、「仕事が忙しいし、休めない」「通院が始まるとしばしば休みを取らないといけない」「経済的に不安」といった理由が、「わざわざ病院に行くほど緊急性がない」との考えを助長しているようだ。
こういった未治療高血圧患者のネガティブな非受診理由を払拭するには、きちんとした血圧コントロールが、「循環器疾患発症」「認知機能低下」「要介護発生」「早期死亡」の予防につながることを改めて訴求する必要があるだろう。
高血圧のデメリットに対する「実感」を強めて未治療高血圧患者の受診率を上げるには、若年層からの健診受診の重要性に関する啓発教育が不可欠となるのは言うまでもない。
また、高血圧に関する認知を高め、検診を受け、その上できちんと治療を開始する流れを構築するための一般市民の啓発の場としては、地域の薬局が最も適していると考えらえられる。
世間に横行する「一度降圧薬を服用すると、一生辞められなくなる」といった誤った情報の是正も、薬剤師が適任である。まさに「健康サポート薬局」の腕の見せどころと言って良い。