敷地内薬局誘致の動きが全国的な広がりを見せている。日本薬剤師会の調査によると、今年9月までに誘致の事例が把握できたのは33都道府県・64件で、2017年8月の前回調査の28都道府県・48件から、5都道府県・16件増えていた。
国立大学附属病院長会議の調査結果では、既に設置されている4国立大学病院のほか、設置準備中と検討中を含めると16大学に上っており、この数は国立大学病院の約3分の1に相当することが分かった。
さらに、既に稼働している千葉大学病院の敷地内薬局で聞き取り調査をした結果、患者の98.8%が敷地内薬局の制度緩和について「良い」と回答し、敷地内薬局を利用した理由として、「病院の近くにあるから」が83.5%と最も多かったことも明らかになった。
2年前、敷地内薬局解禁につながった「薬局の構造規制緩和」の議論の時にも「患者の利便性」「近い、雨に濡れなくて済む」などのフレーズが飛び交ったが、世間が薬局に求めている機能はこの程度のことなのかと愕然としたことがある。
そもそも日本の医薬分業は、患者からの要望で進んだものではない。薬価差益解消と保険点数によるインセンティブによって進展していったもので、この点が海外との大きな違いであり、ポイントでもある。
行政主導で進めたのであれば、分業率の伸びが鈍化するまでに、薬物療法の安全性・有効性の向上という医薬分業の趣旨に沿って、いち早く患者ニーズを汲んで、それに見合うサービスを提供するということをしなければいけなかったが、今日のような状況を作り出してしまったことは痛恨の極みだ。
日薬は「医薬分業の趣旨に反する」として、敷地内薬局を問題視しているが、利便性に勝っているだけの薬局作りをしてこなかったツケは予想以上に大きかったと言わざるを得ない。
とはいえ、ようやく薬剤師・薬局の取り組みによって医療の質や患者QOLの向上につながったというデータを収集し、エビデンスにしようという取り組みが一部で始まりつつあるようだ。遅きに失した感はあるが、薬剤師・薬局が何をしているのかを目に見える形で示すのは必須なことだ。
ただ、2、3店舗の薬局の取り組みではなかなかエビデンスになりにくいという側面がある。そうなると、多店舗展開するチェーン薬局の協力が得られれば心強い。大学や病院などと連携してデータの裏付けをとっていけば、エビデンスになるだろう。
医療費抑制策のもと、次期診療報酬改定も厳しくなることは目に見えている。相手を利することのないよう、エビデンス作りには、互いの感情を乗り越えて、オール薬剤師で取り組む覚悟が必要ではないか。