厚生労働省は22日に開いた医薬品医療機器制度部会で「服用期間を通じて、必要な服薬状況の把握や薬学的知見に基づく指導を実施すること」を、薬剤師が実施すべき事項として薬剤師法などの法律で規定することを提案。同様に、服薬状況や指導内容などを薬剤師が調剤録に記録することを、法律で義務づけるよう提案した。
薬剤交付時に薬剤師が薬学的知見に基づく指導を行うことは法令上規定されているが、交付後の継続的な指導については明記されておらず、検討が進められたもの。
これまでの部会では、こうした業務は薬剤師の本来の義務であるとして法令への明記に反対する声も上がっていたが、今回の部会でほぼ賛同を得る形になったため、法律で規定する方針が固まった。
病院薬剤師は既に、入院患者に対しては病棟業務などを通じて、服薬期間中の効果や副作用の継続的なモニタリングを実践している。一方、病院のように容易に患者にアクセスできる環境にはない薬局薬剤師が今後、外来患者へのモニタリング業務を充実させるには、様々な工夫が必要だ。
課題の一つは、患者との接点をどう確保するかだろう。明日からでもすぐに活用しやすいツールは電話だ。
ある薬局は、投薬1週間後をメドに患者に電話をかけて、効果の有無や副作用発現を早期に把握する取り組みを実践。体調変化やコンプライアンス不良を把握し、薬を中止するなど個別最適化を図ることができたという。このほか、30年以上前から全社的に、患者に電話をかけて服薬状況や副作用の有無などを確認する業務に取り組んでいる薬局もあり、一定の成果を上げている。
電話のほかにも、電子メール、電子お薬手帳、SNSなど様々な情報通信技術(ICT)を使って、患者と継続的に接点を保つ方法がある。その効果を実証する研究も行われている。ICTをどのようにうまく活用するかが今後の焦点になるだろう。
もう一つの課題は、患者個々の状況を踏まえて、投薬から何日目にどんな項目を重点的にモニタリングするかを、薬剤師の業務としてしっかり確立することだ。
患者に漠然と質問を投げかけるのではなく、多数の副作用の中からその時点で特に注意すべき副作用をモニタリングする、などの関わり方が従来にも増して重要になる。
これらの業務の実践は、薬局薬剤師にとっては業務負担増につながるが、未来は拓けるかもしれない。薬剤師が投薬期間中のフォローをしっかり行うことが確保されれば、リフィル処方箋の導入に向けた議論を進めやすくなる。また、医師と薬局薬剤師が協働する「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)を様々な場面で確立できるようになるだろう。
薬剤師の背中を押す法改正と前向きに捉え、新たな業務展開に目を向けてほしい。