薬学生の就職を取り巻く環境は、依然として「売り手市場」が続いているという。背景の一つには、急激な少子高齢化が進む中、将来の医療やセルフメディケーション推進等の担い手となるべき者への高い期待があるのだと思う。一方で、経団連会長が就職活動の時期などを定めた「就活ルール」の廃止を提案するなど、薬学生も含めた学生の就職に関する環境は今後、大きく変わる可能性がある。
そうした中、薬学生の就職に関する課題や問題への対応を協議し、大きな役割を果たすことが期待されるのが「薬学生のための合同企業・大学交流会」だ。同交流会は薬学部・薬科大の就職担当責任者と調剤薬局・ドラッグストア等の人事採用担当者が一堂に介する場であり、今秋に開催された第11回交流会には36大学・35企業が参加。薬学生に関する現状の課題等を議論し、大学側と企業側が問題意識を共有する場として定着している。
これまでも、その時々の様々な課題等を的確に捉えて議論を重ねてきたが、11回目となる今回、同交流会が取り上げたテーマは、「1dayインターンシップ問題点と有用性」と「2019年度から、5年次実務実習が4期制に変わることに伴う就職活動の影響」の二つ。これらは交流会関係者の様々な意見を踏まえた上で決められており、最重要課題といえよう。
今回、1dayインターンシップが交流会のテーマとして取り上げられたが、インターンシップの本来の目的は“就業体験”である。従って交流会でも、「1日で就業体験ができるのかが最大の問題」とされた。確かに、1日の業務の流れは把握できるかもしれないが、企業や仕事、さらには業界のことを理解しようとする上で、1日という期間は決して十分とは言えない気もする。結果、「会社説明会・採用活動になっている」との指摘もあった。
一方、薬学生の忙しさ等を理由に、「1日ならば日程的に参加しやすい」「日数ではなく内容が重要であり、良い内容であれば十分な企業理解に通じる」といった有用性を指摘する意見も挙がった。特段、インターンシップという呼称にとらわれず、企業研究の機会にしたり、参加した学生同士が刺激し合える場にしたりするなど、有益な側面は大いにあると思う。
“薬学生の社会への道をより良いものにする”ことを目的に掲げ、継続的に企業と大学が協力し合い薬学発展に努めてきた同交流会。今回の交流会で取り上げた1dayインターンシップは、薬学生を取り巻く環境が抱える諸問題の一端だとは思うが、“薬学生のための”と冠している以上、一つひとつの問題と真摯に向き合ってほしいと思う。また、同交流会は大学側、企業側という両面からの視点で見ることができるという点が大きなメリットだ。それを生かし、今後も問題解決に進んでいくことを期待したい。