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AMR対策推進月間に考える

2018年11月16日 (金)

 今月は政府が設定する「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」で、全国的にAMRの普及啓発活動やイベントが数多く計画されている。政府のみならず様々な民間の団体が一体となって、かぜに抗菌薬が効かないこと、処方された抗菌薬を医師の指示通りに服用することなど、薬剤耐性菌を増やさないよう国民の主体的な取り組みを促していこうというのが目的だ。最近は関係者の努力もあって、“かぜに抗菌薬は効かない”というキャンペーンがかなり国民に浸透してきている。

 AMR対策推進月間の最中にある今月8日。タイミングを図ったように産官学民の関係者が集結してAMR対策や政策提言を行う「AMRアライアンスジャパン」が設立された。日本薬学会、日本医療薬学会も含めた感染症関連8学会と日本医療政策機構が連携して立ち上げた。

 中立的な組織として立ち上がったアライアンスでは、国民向けに抗菌薬の手引き書などを提供する必要性を訴求したり、新規抗菌薬開発におけるインセンティブや迅速検査の必要性などの課題について議論を重ね、共通認識を醸成しながら政策提言につなげる取り組みを進める。

 さらに来年、日本で開かれる予定のG20大阪サミットに向け、AMR対策を首脳会議の議題に設定するよう国際連携も積極的にアプローチしていく計画で、国民への普及啓発を最大の目的としながらグローバルな連携を模索する野心的な活動プランを打ち出している。

 この中で注目すべきは、日本環境感染学会の賀来満夫理事長(東北大学感染制御・検査診断学教授)の発言にある。地元の仙台市で薬剤師の勉強会を開き、薬局やドラッグストアに「感染症コーナー」を設け、処方された抗菌薬の説明を薬剤師が働きかけようと地域ぐるみの取り組みを始めていることを紹介。国民への理解を深めるためには「市民が薬局や学校などに訪れたときの対応が重要」と強調したのである。

 まさにAMR対策こそ、地域住民の健康を守る薬剤師の役割が発揮されるべきところであり、地域で活動している薬局、ドラッグストアのそれぞれの店舗における創意工夫が抗菌薬の適正使用に向けた普及啓発の効果を左右すると言っても過言ではない。

 現在、薬機法の改正議論が佳境に差しかかっているが、大きな焦点は薬局機能の「3分類」と機能の明確化になっている。

 しかし、そこに地域薬局の創意工夫が活かされる余地は少ない。かかりつけ型の薬局であっても要件で縛られる状態になり、かえってAMR対策など地域活動の足かせになることを危惧する。

 薬局薬剤師に厳しい状況が続く中ではあるが、地域住民の健康を第一に考えるという基本を再認識しつつ、今月のAMR対策推進月間を薬剤師の印象を好転させるきっかけにしたい。



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