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一般薬流通、製配販であるべき姿構築を

2008年05月28日 (水)

 新たな医薬品販売制度の全面施行を前に、一般薬を取り巻く業界の環境が大きく様変わりしている。これまでの改正薬事法に伴う一連の流れでは、この4月に施行された登録販売者制度により、各都道府県では809月にかけて第1回の登録販売者試験を実施する予定だ。また、医薬品リスク分類に伴う外箱表示に関する改正省令告示も先日行われた。いよいよ新販売制度がより具体性を帯びてくる段階に入った。

 制度の具体化に向け、現時点での最大の関心事は、店舗販売業の「管理者の指定の基準」である。今月16日に開催された厚生労働省の第7回「医薬品の販売等に係る体制及び環境整備に関する検討会」では、報告書案の取りまとめに向けた議論が行われたが、意見がまとまらず、6月開催予定の次回検討会に、先送りされた格好となった。

 医薬品販売制度では、一般薬を副作用等のリスクに応じて第1類、第2類、第3類に分け、最も高リスクの第1類薬は「薬剤師」が使用上の注意などの情報提供を行い、販売することが義務づけられている。

 第1類薬を販売する以上、薬剤師の存在は不可欠だ。しかし、薬剤師不在時には第1類薬を販売しないことを徹底した上であれば、店舗営業上の管理者を登録販売者とする考え方は、必ずしも不自然とはいえない。

 従来も「薬剤師不在」の状態で、医薬品を販売している店舗は存在していた。その意味では店舗運営管理上の責任は、「資格」よりも「資質」による部分が大きいとも思える。だが「薬剤師」と「登録販売者」で、店舗管理の能力に決定的な「違い」があるとするなら、そこは安易に妥協してはならない。

 最終的な議論の行方を見守るしかないが、いずれにしても来年以降、改正薬事法遵守の側面から、まずは薬務行政サイドによる医薬品小売業者に向けた徹底した監視・指導が必要になる。

 こうした流れの一方で、以前にも指摘したことだが、卸の一般薬供給が変貌してきた。ドラッグストアの台頭により、以前から「大手量販の販売価格が、卸の仕入値よりも安い」とする声は聞かれたが、今では、商品供給や情報提供面ですら「メーカー、卸ともに相手にしてもらえない」と危機感を募らせる薬局・薬店が増えている。

 事実、一般薬卸の再編も大きく加速すると共に、卸の経営効率化で、零細小売店への十分な対応ができない実情が出ている。昨年来、一般薬の卸として展開してきた企業の再編統合や、業務提携などの相次ぐ動きからも逼迫した状況が見て取れる。

 薬粧卸弱体化の背景には、ドラッグストアの台頭に伴うバイイングパワーの増大や、メーカーが卸を経由せず直接小売業に支払う、いわゆる「飛び越しリベート」の存在も状況を複雑化しており、「メーカーの多くが量販店指向」(卸関係者)と言い切る声もある。

 日本薬剤師会の児玉孝会長も「OTC医薬品と分業は車の両輪。個店への供給体制は厳しく、クリアしなくてはいけない課題」と本紙に述べている。来年の改正薬事法全面施行後、既存の薬局・薬店、ドラッグストア以外にも、コンビニエンスストア、スーパーなど異業種からの販売参入も見込まれるだけに、競争激化は必至だ。

 一般薬はセルフメディケーション推進の大きな要でもある。新たな制度が実施されても、肝心の医薬品供給が伴わなければ、今後、地域の軽医療を担う薬局・薬店の経営に大きな影を落とすことになる。一般薬の流通については、製・配・販が一致して「あるべき姿」の構築に向け、何らかの手立てを講じる時期にきている。



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