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【2018年回顧と展望】薬剤師としての自覚持ち地域での役割果たす‐日薬専務理事

2018年12月26日 (水)

日本薬剤師会専務理事 寺山善彦

寺山善彦氏

 2018年は、6年に一度の診療報酬・介護報酬の同時改定をはじめとして、第7次医療計画と第7次介護保険事業(支援)計画の同時開始、第3期医療費適正化計画の開始など、医療および介護に関する各種計画の節目の年でした。

薬剤師行動規範の制定

 日本薬剤師会では1月17日、「薬剤師倫理規定」を改め、15項目からなる「薬剤師行動規範」を制定しました。任務、最善努力義務、法令等の遵守、品位及び信用の維持と向上、守秘義務、生涯研鑽、多職種間の連携と協働、医薬品の品質、有効性及び安全性等の確保、医療及び介護提供体制への貢献については、倫理規定の項目の内容を見直しました。

 新たに、患者の自主性を配慮する「患者の自己決定権の尊重」、個人を差別せず公正に対応する「差別の排除」、研究や職能の実践を通じた「学術発展への寄与」、果たすべき業務について「職能の基準の継続的な実践と向上」、自身の健康に責任を持ち維持管理する「国民の主体的な健康管理への支援」、公正性の原則を常に考慮する「医療資源の公正な配分」を定めました。すべての薬剤師が本行動規範に基づき専門職としての矜恃をもって、社会から信頼される医療人として日々の業務に取り組んでいただきたいと思います。

診療報酬(調剤報酬)・介護報酬改定

 今回の改定は、かかりつけ薬剤師に係る評価の充実、地域医療に貢献する薬局の評価や薬剤師によるポリファーマシー対策に係る評価の新設など、対物業務から対人業務に向かう流れの中で、地域包括ケアシステムにおける薬局・薬剤師への期待が示されたものであったと考えます。

 前回改定で強く打ち出された「かかりつけ薬剤師」による取り組みは、医薬品の適正使用と薬物治療の安全で適切かつ効果的な提供に不可決なものです。後発医薬品の使用促進については、数量シェアは概ね中間目標値を達成していますが、20年9月までに80%達成の目標に向けて、薬剤師・薬局の一層の貢献が求められます。また、地域包括ケアシステムの構築に向けて、地域における在宅医療・居宅療養に対する薬剤師・薬局の取り組むべき方向性が明確に示されたものとなりました。

敷地内薬局について

 一昨年10月の保険薬局の指定に係る規制緩和により、大学病院等による同一敷地内への薬局の誘致(いわゆる敷地内薬局)が続いています。こうした動きは、処方箋の確認と調剤は医療機関から独立した薬局において実施されなければならないという医薬分業の趣旨に反するだけではなく、「患者のための薬局ビジョン」に示されたかかりつけ薬剤師・薬局の推進にも逆行するものです。かかりつけ薬剤師・薬局の機能を充実させる活動をさらに強化していくと共に、敷地内薬局開設の動きに対しては、引き続き反対していきます。

オンライン服薬指導

 患者がオンライン診療を受診した場所で薬剤師が服薬指導を可能とすること、オンライン診療や訪問診療が必要な地域や患者に対して、薬剤師による対面服薬指導とオンライン服薬指導を柔軟に組み合わせて行うことが、規制改革実施計画に示されました。遠隔服薬指導については、現在国家戦略特区において行われている実証事業の動向を踏まえた上で、薬物治療の安全性と有効性をより確保する観点から慎重に検討すべきものであると考えます。

薬機法の改正

 改正後5年を経過した薬機法は、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において見直しが検討されました。薬剤師・薬局については、医薬品の服用期間を通じて服薬状況を把握・指導し、必要に応じ医師等に情報提供に努め薬物療法の最適化に寄与することが薬剤師の職能であり、基本的機能であること、また、在宅医療への対応や関係機関等との情報提供に主体的役割を担う薬局と専門性の高い薬学管理と特殊な調剤に対応できる薬局の機能と、その機能を患者・住民に判断できるようにすることが議論されました。

 薬局・薬剤師を取り巻く環境は、現行の法体系では規制できないほど変化しました。今後法改正に向けた動きが始まりますが、変化に即した適切な規制のもとで、国民・患者のニーズに的確に対応できる薬剤師・薬局の姿を描かなくてはならないと考えます。

 高齢化と人口減少が加速する中、25年を念頭に進められてきた社会保障・税一体改革は、来年10月の消費税引き上げで区切りを迎え、団塊ジュニア世代が65歳以上となる40年を見据えて、国民皆保険制度の維持・継承と全世代型社会保障の構築を目指した取り組みが始まろうとしています。

 このような中で薬剤師と薬局は、「かかりつけ」としての機能と役割の一層の充実強化を図ると共に、かかりつけ機能に加えて健康、介護等のより幅広い相談機能を有する「健康サポート薬局」を着実に普及推進し、各地域で構築される「地域包括ケアシステム」の一翼を担い、求められる役割を果たしていかなければならないと考えます。



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