日本製薬工業協会会長 中山讓治
新たな元号となる本年は、昨年50周年を迎えた日本製薬工業協会(製薬協)にとっても次の50年の始まりとなります。製薬協は、来る人生100年時代において、誰もが健康でより長く活躍できる明るい未来の創造に向けて、ヘルスケアイノベーションの創出をもって貢献してまいります。
昨年は薬価制度の抜本改革が実行に移されましたが、この改革は「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」の両立を謳っていたにもかかわらず、イノベーションの推進が損なわれる結果となりました。また、2016~18年の経済・財政再生計画の集中改革期間においては、社会保障関係費の実質的な伸びを抑えるための財源の大半は、薬価の引き下げから捻出されましたが、このまま削減が続けば、イノベーションは衰退し、医療の質の低下・国民の健康悪化を招き、社会・経済の支え手が減り、さらに増えた医療費が経済を圧迫し、成長力を低下させるという“デビルサイクル(悪循環)”に向かっていきます。
製薬協はこの流れを転換する必要性を強く認識しており、それを実現するのがライフ・サイエンスだと確信しています。新薬イノベーションにより疾病の治癒・健康寿命が延伸し、社会に依存する度合いが減れば、デビルサイクルとは逆に、社会保障費用の負担軽減、労働力人口の増加に寄与し、財政の改善とともに経済効果が生まれ、さらに次の新薬創出につながる“エンジェルサイクル(好循環)”をもたらすことができます。
今の日本はどちらのサイクルに進むのか、その岐路に立っています。25年には団塊の世代が後期高齢者となり、40年には団塊ジュニア世代が高齢者となり、かつ全ての世代で人口が減少するなど、人口構成の変化が社会を大きく変動していく中、エンジェルサイクルに転換するために重要なのは、今までの単年度ベースの政策ではなく、中長期的な観点で社会を変革していくことです。
そのために、われわれからも積極的に政策提案を行ってまいります。国民の視点・ニーズを基本に、今、製薬業界に何が求められ、何をなすべきかを改めて整理した上で、「イノベーションの推進に向けた研究開発の基盤整備と体制構築」と「イノベーションを評価・促進する仕組みづくり」に向けた提案を行ってまいります。社会の諸課題と積極的に向き合い、行動していきたいと考えています。