日本製薬団体連合会会長 手代木功

現在、米中貿易戦争に代表される保護主義的な動きも顕在化し、グローバル化の進展や経済連携に相反する混沌とした状態が続いておりますが、国連や主要国サミット等の国際会議の場において、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)や薬剤耐性菌(AMR)が、都度大きく取り上げられていることは、世界的に医療、健康の問題が、政治経済問題と共に大きな世界共通の課題として認識されていることの証左だと思います。特に今年は、わが国においてG20開催が予定されており、今まで以上に大きな役割とリーダーシップが期待されています。
そのような中、私たち医療に携わる者としては、本庶佑先生による日本人として5人目のノーベル医学生理学賞の受賞は勇気づけられるニュースでした。日本のイノベーションが医薬品となり、世界中の多くの患者様に大きな恩恵をもたらし、希望を与えたことを誇りに感じます。
その一方で、イノベーションを追求する医薬品産業を取り巻く環境は、日々厳しさを増しています。特にますます高度化する医薬品の研究開発における生産性低下を克服するために、様々な業種とのオープンイノベーション、産官のパートナーシップによるマッチングやファンドの活用、IoT・AI・ビッグデータの活用等に取り組むことで、活路を見出そうと懸命に努力しております。
日薬連としても、イノベーション創出を効率的かつ迅速に行うための環境整備として、研究開発を支援する税制、イノベーションを適正に評価する薬価制度、技術革新に柔軟かつ迅速に対応できる薬機法の改正、セルフメディケーションの推進とセルフメディケーション税制の維持・拡充、後発医薬品のさらなる使用促進、そして製薬産業の国際化などの対応に昨年同様取り組んでまいります。
言うまでもなく、公的医療保険制度下にある医薬品産業は、今まで以上に倫理的でかつ透明性の高い活動と、その説明責任が問われていることを念頭に、今年も人々の健康寿命の延伸、経済・科学技術の発展を通して、世界に貢献してまいりたいと存じます。