2017年1月1日からスタートした特定の医薬品購入に対するセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)。対象となるOTC医薬品を購入した金額が年間1万2000円を超えていれば、確定申告により所得控除を受けられる。今年で3年目となるが、健康寿命の延伸、そして医療費削減の観点からも、セルフメディケーションを後押しする同税制の充実を望みたい。
日本一般用医薬品連合会や日本OTC医薬品協会など関連団体では、これまでもセルフメディケーション税制の認知や利用意向に関する生活者調査を継続的に行ってきた。昨年春の確定申告の時期に実施した第4回調査では、一次調査として母数をこれまでの1000人から15万3000人へと大幅に拡大し、さらに同税制の利用者等の意識と行動を深掘りするために、実際に申告した群や利用しなかった群など3群に区分した二次調査(約600人が対象)を行っている。
この中では、セルフメディケーション税制申告者に特徴的な傾向も見られている。「セルフメディケーションに関心があり実践している」の割合が、全回答者(約15万人)の比率と比べて大きく上回っているのは当然のこととして、「インフルエンザの予防接種を受けた」は全回答者が25.6%なのに対し、申告者では39.6%と14ポイント上回った。また、「軽い症状はOTC医薬品で対処する」という人は、全回答者が38.2%なのに対して申告者では59.7%と、約20ポイントも上回った。
さらに、かぜ症状やアレルギー(鼻や眼の症状)、肩・首・腰の痛み、胃の症状、頭痛・生理痛など、17年に経験した症状について聞いたところ、同税制申告者については16年に比べて17年の受診は、「増えた」よりも「減った」とする割合が、いずれも症状についても顕著に上回っている。前出の「軽い症状はOTC医薬品で対処する」人が半数強いることからも、これを裏づけている。
国税庁では、セルフメディケーション税制について初年度の申告者は2万6000人としており、医療費控除を行った749万人と比べると、まだまだ数字的には少ない。一方で、前記の第4回生活者意識調査では、同税制の認知度は約65%まで高まっているものの、同税制の開始当初から指摘のあった制度の複雑さ、手続の煩雑さ、対象製品が限定されていること、年間購入金額の最低限度額(1万2000円)など、申告に当たっては様々な条件があるのも事実である。
セルフメディケーション税制はあくまでも時限措置であり、同制度の継続・恒久化を望むのはもちろん、実際の申告者や非利用者が望んでいた「もっと使いやすい制度」の実現が急がれる。さらにOTC業界には、同税制の周知と共に、引き続きセルフメディケーション全般についての積極的な啓発活動も望みたいところだ。