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通知を対人シフトへの好機に

2019年04月12日 (金)

 厚生労働省は、薬剤師以外の者が行うことができる業務の基本的な考え方を整理した通知を都道府県に発出した。

 薬剤師が調剤に最終責任を持つことや、目の届く場所で実施されること、機械的な作業であることが前提となるが、非薬剤師が実施できる具体的な行為として、▽処方箋に記載された医薬品の取り揃え、▽薬剤師による監査の前に行う一包化した薬剤の数量の確認――を例示した。

 いずれの行為も、実際に調剤の現場で行われていることも含め「現時点での考え方を整理して示したもの」(厚労省)とされるが、都道府県によっては非薬剤師が調剤室に入ることが指導の対象となるケースもあるなど、基準が曖昧なのが現状であり、明確化したことの意義は大きい。

 通知では、薬局開設者に対し、業務手順書の整備や、業務に携わる非薬剤師への研修の実施などを求めている。人件費削減のために非薬剤師を雇っても、法令遵守体制が十分に整っていない環境で業務が行われたのでは本末転倒である。

 政府が今通常国会に提出した医薬品医療機器等法(薬機法)改正案では、服薬期間中の継続的な患者フォローの義務化や薬局の機能別都道府県知事認定制度(名称独占)の導入などが提案されている。

 厚労省は法改正に伴い、薬剤師の対人業務がこれまで以上に増えることを想定し、薬剤師の監督下で薬剤師以外の者に実施させることができる業務を整理し、別途、通知する方針だ。

 さらに、厚労省医薬・生活衛生局の宮本真司局長は、現行で「処方箋40枚につき薬剤師1人」を薬局に置く配置基準を見直す考えを示すなど、業務のあり方が大きく変わろうとしている。

 昨年末の薬機法等制度改正に関するとりまとめでは、医薬分業のあるべき姿に向けて、診療報酬・調剤報酬で医療機関の薬剤師や薬局薬剤師の適切な評価を求めていることもあり、薬局関係者の間では「対物業務の報酬がどこまで引き下げられるか」に関心が集まっているようだ。

 薬機法改正と保険点数の両面で政策誘導し、一気に対人業務へのシフトを促したい厚労省の思惑が見て取れるが、象徴的なのは、今回の通知を受け、「自分たちの仕事が奪われてしまうのではないか」という懸念と「これでいままで不十分だった業務ができる」との前向きな声が入り交じっていることだ。

 患者のための薬局ビジョンが掲げる「モノからヒトへ」を例に挙げるまでもなく、薬剤師がいつまでも対物業務に固執することは非現実的だ。新たな業務を開拓するという意識が希薄なままでは、時代に取り残されてしまう。

 各方面からの批判を封じ込めるためにも、これまで十分に手が回らなかった患者サービスに直結した業務に覚悟を持って取り組んでもらいたいと思う。



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