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生活者調査から見えた新税制の課題

2019年07月05日 (金)

 日本OTC医薬品協会と日本一般用医薬品連合会は6月24日、一般生活者16万人に実施したセルフメディケーション税制に関する調査結果を発表した。同調査は昨年3月の第4回調査から15万人超の大規模で行っており、5回目となる今回は3月の確定申告の時期に実施し、16万0378人が回答した。

 特徴的だったのが、同税制の認知度(聞いたことがあるを含む)は、前回の64.6%が今回は71.3%と、着実に増加傾向を示した一方で、同税制を「利用したい」という利用意向は、ほぼ前回並みの11.0%にとどまった。国税庁が5月30日に公表した同税制の利用者数も、昨年と同じ2万6000人だったことからも、認知度の向上と利用意向が相関しないことが改めて示される結果となった。

 2017年に創設された同税制の目的は「国民のセルフメディケーションの推進」であり、これを推進していくことは国民の自発的な健康管理や疾病予防の取り組みを促進し、さらには医療費適正化につながることが期待される。今回の調査でも、実際にセルフメディケーション税制を利用した群では、非利用群等と比べて「OTCで早めの対処をする」「病院受診とOTCの使い分けを考える」などの意識が顕著に高かった。同じく利用群では前年に比べ、軽い症状の場合はOTCでの対処が増加し、病院での対処が減少していた。

 これら健康意識や行動変容からも、同税制の浸透推進活動はセルフメディケーション意識を高めるのに寄与する可能性が高いと言えるが、ではどうすれば利用意向を高められるか。調査では、現行の税制利用者にとって「申告対象の品目拡大」のニーズが最も高く、将来の利用が見込める利用予備群にとっては「下限金額が下がること」へのニーズが最も高かった。

 医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制の利用には、まず同税制のマークが付いているOTC医薬品を年間1万2000円超購入することが必要だが、税制対象のスイッチOTC薬は1727品目(5月20日現在)で、これは市販されるOTC薬全体の15%程度に過ぎない。対象外の品目には、マスメディアで頻繁に目にする有名ブランド商品、家庭薬としてのロングセラー商品も多く、購入側にとっては分かりにくさ、不便さが当初から存在していたのは否めない。

 OTC薬協などは今回の調査結果を踏まえ、セルフメディケーション税制をより使いやすい制度に改善すべく「対象品目の拡大」や「下限金額の引き下げ」等を中心とした税制改正要望を今後提出する予定だが、同制度は5年間の時限制度であり、このままでは21年12月で制度自体がなくなってしまう。

 セルフメディケーションをわが国に根づかせるためにも、関連団体が一体となった対応が急務と言える。



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