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踊り場迎える後発品産業

2019年07月19日 (金)

 政府の方針を背景に売上を伸ばしてきた国内の後発品産業は今後、成長の踊り場を迎えるのではないか。医療費の伸びを抑制するため、政府は後発品の使用割合80%(数量ベース)を2020年9月までに達成することを目指し、様々な施策を展開してきた。18年9月の薬価調査では72.6%まで近づいており、到達は間近に迫る。その後どこを目指して成長を図るのか、方向性は見えづらい。

 政府はこれまで目標値を段階的に引き上げ、診療報酬上の手当を設け、後発品の使用促進に取り組んできた。07年には「12年度までに30%以上」、13年には、分母から新薬を除いた計算式に変更した上で「18年3月末までに60%以上」との目標を掲げた。15年には「17年央に70%以上、18年度から20年度末までのなるべく早い時期に80%以上」とし、17年には80%の達成時期を「20年9月まで」と定めた。

 オーバーペース気味にも見えた政府の方針を受け、国内の後発品産業は工場の新設や買収に多額の資金を投じて増産体制を確立した。後発品の社会的認知度を高めるテレビCMも積極的に展開。MRを雇用し、医療従事者への説明にも力を入れた。こうした努力もあって後発品の使用割合は短期間で大幅に伸びた。

 問題はここからだ。今までは明解な数値目標があったが、目標達成を目前に控えた今、“ポスト80%”の展望が不透明になっている。これまでは「使用割合80%実現」との目標が盛り込まれていた政府の「骨太の方針」に今後、どのような目標が掲げられることになるのか。後発品産業側はどのような目標設定を政府に働きかけるのだろうか。

 方向性の一つは80%以上の使用割合を目指すことだ。都道府県によって後発品の使用割合にはばらつきがあり、使用感が重視される外用剤では一般的に後発品の使用割合は低い。そこに狙いを定めて使用を推進する方法がある。

 もう一つの方向性は、後発品が存在しない新薬についても後発品への置き換えを目指す戦略だ。

 そのツールとして期待されるのが病院や地域単位で策定される医薬品の使用指針「フォーミュラリー」。新薬や後発品など様々な同種同効薬の中から有効性、安全性に経済性も踏まえて使用推奨薬を決める。医師の理解を得ることや、フォーミュラリーの促進を診療報酬でどう評価するかが課題となる。

 バイオ医薬品が台頭する中、バイオシミラーの使用促進も欠かせない。とはいえ、自社開発には多額の投資が必要になる。

 いずれの方策でも、従来と同じ角度での後発品産業の成長は見込みづらい。今後、後発品という枠組みにとらわれず、新たな事業展開が必要になるかもしれない。どの時点でどんな決断を下すのか。後発品各社の経営者の手腕が、今まで以上に問われる時代になっている。



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