中央社会保険医療協議会が2020年度診療報酬改定に向けた第1ラウンドの議論を終えた。調剤報酬の議論は、秋以降に複数回予定されている中医協総会で本格化するが、今回は既に調剤料の引き下げに注目が集まっている。
「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太の方針)に、調剤料などの技術料の意義を検証し、適正な評価に向けた検討を行うことが盛り込まれ、患者のための薬局ビジョンが掲げる「対物から対人へ」に沿う形で、対物業務の適正化が推し進められると考えられているからだ。
調剤料をめぐっては、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会などでも、「単純に薬剤の調製などの対物中心の業務を行うだけで成り立っている部分があるのではないか」との意見も出ていた。
厚生労働省保険局医療課が社会医療診療行為別統計をもとに算出した技術料に占める調剤基本料、調剤料、薬学管理料(点数ベース)の割合によると、調剤料の占める割合は近年減少傾向にあるものの、それでも直近の18年度は技術料の約53%を占めている。
過去20年近く50%台で推移していることを踏まえると、調剤報酬が構造上、対物業務に依存する体系になっていると考えられるが、いずれにしても、薬局で薬を出していれば経営が成り立つ状況であることは確かである。
一方、対人業務を評価する薬学管理料の占める割合は、近年増加傾向にあるものの、18年度は21.3%程度にとどまっている。やはり、現時点で多くの薬局は対物業務に大きく依存していると言わざるを得ないだろう。
今後、現場の薬剤師・薬局は、調剤料の割合を下げて、薬学管理料の割合を高めていかなければ、胸を張って対人業務に重きを置いた業務を行っているとは言えない状況になる。
その時に、調剤料をどのようにすべきか、薬剤師・薬局は何をして評価されるべきなのかについて、共通のイメージを持つ必要がある。
調剤料は16年度、18年度改定で引き下げられ、20年度改定では、さらなる適正化が予想される。懸念されるのは、調剤料を引き下げた後に、その分の点数を付ける項目がないということである。
下げた点数を付ける部分がなければ、そのまま召し上げられてしまう可能性も出てくるからだ。
医薬品医療機器等法改正も相まって、まさに薬剤師の業務が大きく変わろうとしている時期にある。今こそ、日本薬剤師会をはじめ、日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会も含め、関係者が調剤報酬のあるべき姿を検討すべき時期に来ているのではないか。