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薬局での在宅医療の意味は

2008年07月14日 (月)

 久しぶりに明細書をまじまじと見てしまった。技術料が7500円、出張費2200円、部品代合計600円。消費税が入って締めて1万0815円也。何と73%が技術料、出張費を含め人件費は全体の94%にも達する。実は洗濯機の修理にかかった費用だ。

 同じ日、買ってまだ3年ほどの照明器具が不具合を起こしたので、量販店に商品を持ち込んだ。2度も足を運んだが結局、新品を買って家に帰った。

 対応した2人の店員は、故障の原因については深く追求せず、どちらも素人と同じレベル。その意味では“技術”を持ち合わせていなかったようだ。しかし「修理代は400005000円。新しく買っても1万円ですよ。かえって高くつきますよ」との“プロ”の言葉に乗せられてしまった。

 そこで、普段見ない薬局の“詳細が分かる領収書”も見てみた。すると調剤技術料145点、薬剤管理料30点、薬剤料238点で保険点数の合計は413点。消費税はないので総額4130円で,自己負担は1240円であった。“技術料比率”は42%。電気屋さんの“技術料”の高さに改めて驚かされた。

 ところで、後期高齢者医療制度のあり方が,大きな議論を呼んでいるが,ポイントは高齢者の在宅医療・介護であろう。国の施策に呼応して医師や薬剤師など医療関係者は、学会や研究会の中で、その課題や対応策をめぐり真剣に検討している。

 先日も薬局・薬剤師が中心メンバーとなっている研究会を取材したが、薬剤師・薬局による在宅医療の支援が焦点になっていた。ただし、在宅での薬剤師業務のあり方を、具体的に演者とフロアとが討議するというにはほど遠く、ほとんどの参加者は、その道の先達から教えを請うという印象を受けた。

 その時に発表した演者らのバックボーンは、大手チェーンではないが、複数店舗を擁する薬局が中心。また、数店舗あるうちの、若干数の店舗が,積極的に在宅医療に取り組んでいるというのがほぼ共通項で、何よりも強い熱意のある点が,演者に共通していたように思う。

 講演の後、フロアから二つの印象的な質問があった。一つは訪問服薬指導を行うには、薬局として無菌調剤を行う設備などが必要で,その整備に費用がかかることから、要は“儲からないのでは”との質問であった。

 これに対しある演者は、「社長さんでベンツに乗っている方も多いかと思いますが、それを考えればねぇ……」「薬局にはいろいろな調剤機器やレセコンがありますが、それら一つひとつの費用対効果は計算できない。仕事はトータルで見ればいいのでは……」と語った。両者のやり取りは、将来の薬局のあり方に関するイメージの違いと映った。

 もう一つは、在宅医療を望まない人を,どう在宅につなげるかという趣旨の質問であった。これに対しある演者は、無理矢理に患者を在宅へ導くのではなく、医療の選択肢の一つに在宅があること、その中で薬剤師ができることを示すべきだと答えた。

 最近開かれた高齢者医療の学会で、なぜ在宅医療が進まないかという議論があった。現場の若手開業医の口からは、「病院の方が安心。われわれがレベルを上げていく必要がある」と自戒的に話したことも印象的だった。

 先の電気屋のように、高い技術料と出張費が得られる見込みは特にないが,医師も悩み、レベルアップを図り、患者によりよい医療を提供する選択肢の一つになろうとしている。しかし、医師だけでは地域医療は成り立たない。医療提供施設の意味を,改めて噛み締めたい。



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