中央社会保険医療協議会が1日に2020年度診療報酬改定案を加藤勝信厚生労働相に答申した。
調剤報酬では、薬局における対人業務を評価する「服用薬剤調整支援料2」(100点)、「吸入薬指導加算」(30点)、「調剤後薬剤管理指導加算」(30点)、「経管投薬支援料」(100点)などを新設し、「地域支援体制加算」は現行の点数を引き上げ、より地域でかかりつけ機能を発揮できるよう調剤基本料1を算定している薬局の実績要件を厳しくした。
調剤報酬をめぐっては、「累次にわたる改定で抜本的に見直す」との方針が掲げられているが、次回の22年度改定において医薬品医療機器等法の改正を踏まえた調剤基本料のあり方が見直されることもあり、小幅の改定にとどまったという印象である。
その中で注目したいのが、同一薬局の利用推進だ。薬剤服用歴管理指導料について、3カ月以内に再度お薬手帳を持参して来局した患者を43点、それ以外の患者を57点に設定した。低い点数と高い点数の差を広げることで、患者負担の少ない薬局を繰り返し利用してもらうことを見込んだものだが、患者が同じ薬局を利用しているかどうかは、「かかりつけ」の新たな指標になることが期待されるからだ。
そもそも今回の診療報酬改定は本体が0.55%のプラスとなり、調剤報酬もプラス0.16%という財源規模の中で見直された。さらに、改定率の外枠で調剤基本料を引き下げる措置が見送られたこともあり、ドラスティックな点数の見直しは難しかったのではないだろうか。
ただ、診療報酬本体のプラス改定と外枠による調剤基本料引き下げ回避で危惧されるのは、薬局関係者が安堵してしまうことである。現在も決して医薬分業に対するバッシングは収まっていないし、対物業務に依存している薬局は依然として多い。
今回、調剤料や調剤基本料の一部を削減した財源の多くが上乗せされた項目は「薬剤服用歴管理指導料」だったとされる。調剤を行っている保険薬局のほとんどが算定しているだけに、やはり「点数を付けるところがなかった」ということなのだろう。
とはいえ、今回の改定でいくつかの対人業務のメニューは出来上がった。これは次回以降、点数の付けどころができたことを意味し、調剤基本料が大幅に見直される次期改定までに対人業務のメニューに取り組んでいない薬局は大きなダメージを受ける可能性がある。
やはり、今回は本体プラス改定とは言え、冷静に受け止める必要がある。薬局改革の足かせにしないためにも、対人業務で新設された項目をはじめ、医療機関と連携して行う業務にしっかり取り組み、次回改定でさらに発展させることができるような対応が求められる。
とりわけ、全ての薬剤師の職能団体である日本薬剤師会には、先頭に立って牽引する役割を担ってもらうことを期待したい。