2018年12月に厚生労働省から「医薬品適正流通(GDP)ガイドライン」が発出されて1年以上が経過した。GDPに対する理解を深め、普及啓発に向けた取り組みが進んでいる。既に日本製薬団体連合会品質委員会、日本製薬工業協会品質委員会GMP部会が編集した「解説書」が発刊されているが、1月末には大阪府が自治体として独自に作成した「解説書」が府の審議会で了承され、府下の業者への周知が図られることになった。
GDPについて、国内では15年の「医薬品産業強化総合戦略」で医療用医薬品の安全性確保策として、PIC/S-GDPに準拠した日本版GDPガイドライン策定の検討が明示された。その検討過程で17年1月にC型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造医薬品流通事件が発生。医薬品の流通管理の適正化が課題としてクローズアップされ、ガイドライン策定が急務となったことは記憶に新しい。
大阪府薬務課では、偽造医薬品の流通を重く受け止め、流通段階の品質確保と偽造医薬品の混入未然防止を喫緊の課題として、府下の全医薬品卸販売業者への立入調査を実施。また、指針の位置づけであるガイドラインの考え方を業務に取り入れることで医薬品の品質保持に寄与し、偽造医薬品が正規流通経路に流入することを防ぐ一助になると判断。解説書の作成に取り組んできた。
今回、作成された府の解説書は、卸売販売業者にGDPガイドラインを理解し、取り組んでもらうため、カタカナ用語の解説や既に法令で規定されている項目を明示。イラストなどでイメージしやすくすると共に、事例紹介を加えることにより業務の参考にしやすく工夫している。
また、解説書の別添では、課題となる返品業務に関して事前に卸業者にアンケート調査を実施。集まった事例に基づき12項目の留意点を記載し、返品チェックリストの事例なども紹介しているのも特徴である。
ただ、ガイドラインの適応範囲は医薬品の市場出荷後、薬局、医薬品販売業者、医療機関にわたるまでの医薬品の仕入れ、保管、供給業務までであり、薬局や医療機関は適応範囲外となる。
それでも薬局や医療機関には、患者に渡すまでの医薬品の品質管理という大きな責任がある。GDPガイドラインの適応範囲外だとしても、一定の品質を担保するための責任は生じる。また、卸売販売業者への返品業務や輸送時の温度管理のほか、ドラッグストアなどの物流センターからの店舗間配送の課題など、将来的なGDPの法制化に向け整合性を図っていくにはまだ多くの課題が山積する。
今回、大阪府が作成したガイドライン解説書は今月中にも府のホームページに掲載される予定である。医薬品の製造販売業者や卸売販売業者のみならず、医薬品流通の末端を担う薬局薬剤師もぜひ参考にしてもらいたい。