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医療崩壊、家庭医の育成に目を向けて

2008年8月20日 (水)

 救急医療での患者のたらい回しや、公立病院の産科・小児科の閉鎖など、全国各地で医療崩壊を象徴する出来事がマスコミを賑わして久しい。

 救急医療のたらい回しの背景には、第三次救急医療を担う救急救命センターに軽症や中程度の患者が集中するという要因が挙げられている。さらに、専門救急医の人手不足が、悪循環に拍車をかけているといわれている。第三次医療だけなら、医師としてのやり甲斐もあり、モチベーションも高いだろう。だが、第一次、第二次救急医療に忙殺される現況を見れば、救急専門医を志す医学生が少なくなるのも頷ける。

 もともと救急医療は、地域医師会や大学病院・基幹病院の医師が協力し、輪番制で休日夜間診療所に詰め、かぜなどの軽医療を診療する「第一次救急医療」、地域の病院が中核となって骨折の整復や虫垂炎の処置など手術・入院を要する患者の治療に当たる「第二次救急医療」、脳卒中、心筋梗塞、頭部外傷などの重篤救急患者を対象とする「第三次救急医療」に、棲み分けしてスタートした。

 だが、その後の第一次、第二次救急医療体制の弱体化や、近年の患者の大病院指向により、軽症や中等度の患者が、夜間でも高度な診療機能を有する第三次救急医療に押しかけるようになり、救急医療体制に大きな破綻を生じてきた。

 小児科医不足の要因も、救急医療も含めて、全ての小児の診療を小児科が行っているという現状によるところが大きいと考えられる。

 果たして、これらの現象を打破する妙手はあるのか。その一つに家庭医の活用が考えられる。家庭医は、日本ではまだまだ浸透しているとは言えないが、欧米では一般社会に深く浸透している。

 家庭医とは、一つの専門的な診療だけを行うのではなく、患者、家族、老若男女を問わず、疾患に関わるあらゆる相談に応じる医師を指している。家庭医には、全診療科の疾患について、ある程度判断できる幅広い知識と技能が要求されるのは言うまでもない。国によっては、分娩まで受け持っているところもあるという。

 医療制度の崩壊は、医療不信によるところが大きいと言っても過言ではないだろう。

 その点で家庭医は、5010年のスパンで家族全体を診ることで、医師にとって重要な患者の背景が理解でき、患者やその家族と深い信頼関係を構築できるという大きな強みがある。

 わが国も家庭医のさらなる育成に力を注ぎ、医師と患者がお互いをおもんばかる人間関係が構築できれば、医師の限界も患者に理解してもらえるようになるだろう。

 家庭医が患者の身近な存在となり、患者の弁護士役として行動すれば、現代社会に渦巻く医療不信の払拭にもつながるかもしれない。

 しかも、家庭医には、専門細分化されていく二次医療や三次医療の中で、患者と専門医の橋渡しをするファーストコンタクト的な役割が期待できる。

 その延長線上として、家庭医が、二次医療、三次医療への振り分けをきちんと行うようになれば、患者も安心してその指示に従うだろう。

 家庭医のさらなる育成と活用を図ることにより、救急医療や小児科不足の現状に歯止めをかけられる可能性は高いのではないか。




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