薬学部4年制課程の新規募集を停止し、6年制課程に一本化する国公立大学が目を引くようになってきた。岐阜薬科大学が2017年度の入学生から踏み切ったのを皮切りに、大阪大学薬学部が19年度から実施。徳島大学薬学部も21年度の入学生から実行に移すことを公表した。
18年4月に薬学部を新設した山陽小野田市立山口東京理科大学は当初から6年制のみでスタート。21年4月に新設予定の和歌山県立医科大学薬学部も6年制単独での船出となる見込みである。
4年制では薬学研究者の育成を重視し、6年制では主に薬剤師の育成に取り組むという位置づけの違いから、国公立大学は4年制と6年制を併設し、私立大学は6年制のみを設置することが多かった。
しかし、和歌山県立医科大学を含めると21年度には薬学部を持つ国公立大学は19大学に達し、そのうち5大学は6年制単独の設置となる見通しだ。国公立でも4校に1校は6年制一本化という時代に突入する。
国公立大学が6年制一本化に踏み切るきっかけになったのは、薬学教育6年制開始に伴う経過措置の終了である。これによって、18年度以降の4年制入学者は薬剤師国家試験を受験できなくなった。
受験生の多くは安定志向が強く、国家資格取得の可否には敏感だ。研究者を育成するにしても、優秀な学生を確保し続けるためには、薬剤師資格を取得できる道筋を設ける必要があった。
研究者として創薬に関わる上でも、臨床の知識や経験が役立つ時代になっている。臨床の知識は他学部卒の研究者との差別化にもつながる。
こうした背景から、4年制課程を発展的に融合させて6年制課程に一本化し、6年制の枠内で研究者と薬剤師の両方の育成に取り組む動きが出てきた。大学院への進学へとつなげて博士号を持つ薬剤師を多数輩出することで、将来不足が危惧される薬系大学教員のなり手を育てるという意義も大きい。
これら国公立大学の動きは、研究者育成を重視した6年制という新たな道筋が生まれたことを意味する。大阪大学や徳島大学は、6年制課程のうち研究者を育成するコースでカリキュラムを柔軟に改編。通常は4年次後期から5年次にかけて行う事前学習と実務実習を1年遅らせて、5年次後半から6年次にかけて行うようにし、研究室配属後の卒業研究に連続して取り組めるようにした。
国公立大学の6年制一本化を契機にした薬学教育の多様化は歓迎すべきことである。06年度に薬学教育6年制がスタートして以来、各大学は横並びの均一な教育を強いられる傾向が強かった。薬系大学の数が多すぎると指摘される中、私立大学を含め各大学が特徴や個性を競い合い多様な教育を展開し、様々な人材を社会に輩出するようになれば、薬学全体の強化にもつながるのではないか。